不動産基礎知識
2026年09月05日

同じ3,000万円控除でも別物です。自宅売却と相続した空き家、何が違う?

不動産を売却するとき、「3,000万円控除」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。

実際、売却のご相談をお受けしていると、

「3,000万円までなら税金はかからないんですよね?」

「親から相続した実家なので、3,000万円控除が使えますよね?」

と聞かれることがあります。

ところが、この「3,000万円控除」、少し分かりにくいところがあります。

自分が住んでいた家を売却するときに使える3,000万円控除と、親などから相続した空き家を売却するときに使える3,000万円控除は、名前は似ていますが別の特例です。

当然、使える条件も違います。

さらに、「3,000万円で売ったから税金がかからない」という意味でもありません。

ここを勘違いしたまま売却を進めてしまうと、売ったあとになって「思っていたより税金がかかる」ということにもなりかねません。

特に相続した実家の場合は、建物の築年数や相続後の使い方、売却する時期など、確認しておきたいことがいくつもあります。

今回は、できるだけ難しい税金の言葉は使わず、

「自分が住んでいた家を売る場合」

「親が住んでいた家を相続して売る場合」

この2つを比べながら、「3,000万円控除」の違いを分かりやすくお話ししたいと思います。

「3,000万円控除が使える」と聞いたけれど、どっちの話?

不動産の売却で「3,000万円控除」と言われる制度には、大きく分けて今回取り上げる2つがあります。

一つは、自分が住んでいる、または住んでいたマイホームを売却したときの特例。

もう一つは、親などが住んでいた家を相続し、一定の条件を満たして売却したときの空き家の特例です。

どちらも条件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できるため、同じような制度に見えます。

でも、入口が違います。

まずここを分けて考えると、その後の話がずいぶん分かりやすくなります。

自分が住んでいた家と、親から相続した家では制度が違います


一番簡単な分け方は、

「その家に誰が住んでいたのか」

です。

自分が生活していた自宅を売るのであれば、まず考えるのは「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」です。

一方、

「親が亡くなり、誰も住まなくなった実家を相続した。」

このような場合に検討するのが、いわゆる「相続空き家の3,000万円特別控除」です。

ここで注意したいのは、

「相続した=空き家特例が使える」

というわけではないことです。

相続した家であっても、建物の建築時期や亡くなった方の居住状況、相続してから売却するまでの使い方などによって、対象になる場合とならない場合があります。

逆に、自分が以前住んでいた家については、現在そこに住んでいなくても、一定の期限内に売却すれば居住用の3,000万円控除を使える可能性があります。

ですから、

「空き家だから空き家の3,000万円控除」

という分け方ではありません。

誰が住んでいた家なのか。

どういう経緯でその不動産を所有しているのか。

まずはそこから考える必要があります。

そもそも「3,000万円控除」とは何を3,000万円引くのか


ここも、よく勘違いされるところです。

例えば、自宅が3,500万円で売れたとします。

「3,000万円控除だから、3,500万円-3,000万円=500万円。その500万円に税金がかかる。」

こういう計算ではありません。

不動産を売却したときの譲渡所得は、基本的には、

売却価格 -(取得費+譲渡費用)= 譲渡所得

という考え方で計算します。

取得費とは、その土地や建物を購入したときの代金などです。

譲渡費用には、売却するときに支払った仲介手数料などが該当します。

そして、条件を満たして3,000万円控除が使える場合には、この計算で出てきた譲渡所得から最高3,000万円を差し引くという仕組みです。

例えば、

売却価格 4,000万円
取得費 1,500万円
譲渡費用 200万円

だったとします。

この場合、

4,000万円-(1,500万円+200万円)=2,300万円

譲渡所得は2,300万円です。

ここで3,000万円の特別控除を適用できれば、課税される譲渡所得は0円になります。

つまり、「売却価格が3,000万円を超えたら税金がかかる」「3,000万円以下なら税金がかからない」という制度ではありません。

この違いは、実際の売却を考えるうえでとても大切です。

また、昔購入した実家などでは、「いくらで買ったのか分からない」「昔の売買契約書が見つからない」ということもあります。

取得費が分からない場合には別の計算方法が必要になることがありますので、この点については後ほど改めて説明します。

まず覚えておいていただきたいのは、

3,000万円控除は、売却価格から3,000万円を引く制度ではなく、売却によって出た譲渡所得から最高3,000万円を控除する制度

ということです。

自分が住んでいた家を売る「居住用3,000万円控除」

まずは、自分が住んでいる、または以前住んでいた家を売却する場合です。

正式には「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」といいます。

名前だけ見ると難しそうですが、簡単に言えば、マイホームを売却して利益が出た場合に、一定の条件を満たせば、その譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる制度です。

この特例の大きな特徴は、所有していた期間の長さに関係なく利用できることです。

ただし、「自宅を売れば必ず3,000万円控除が使える」というわけではありません。

現在住んでいるのか、すでに引っ越しているのか、建物を解体しているのか。

状況によって確認する条件が変わります。

現在住んでいる自宅を売却する場合


現在、自分が生活しているマイホームを売却するのであれば、この特例を検討することになります。

大切なのは、実際に自分の生活の本拠として使っている家であることです。

例えば、

「3,000万円控除を使いたいから、一時的に住民票だけ移した。」

これでは対象になるとは限りません。

税金の制度では、住民票がどこにあるかだけではなく、実際にそこで生活していたのかという実態も重要になります。

また、別荘や、主に趣味・保養のために所有している家などは、原則としてこの特例の対象にはなりません。

普通に自宅として暮らしてきた家を売却するのであれば、まずこの居住用3,000万円控除が使えるかを確認してみる。

これが基本です。

そして、この特例は「何年以上所有していなければならない」という制度ではありません。

長年住んだ家だけが対象というわけではなく、所有期間が短い場合でも、その他の条件を満たしていれば適用できる可能性があります。

ただし、夫婦や親子など一定の特別な関係にある人へ売却した場合など、対象にならないケースもあります。

「自宅だから大丈夫」と最初から決めつけず、売却前に条件を確認しておいた方が安心です。

以前住んでいた家でも使える場合があります


ここは意外と知られていません。

居住用3,000万円控除は、売却するときに必ずその家に住んでいなければならないわけではありません。

例えば、

新しい家を購入して先に引っ越した。

転勤で別の場所へ移った。

高齢になり、子どもの家や施設などへ移った。

このような理由ですでに住んでいない家でも、一定の期限内に売却すれば特例の対象になる可能性があります。

原則として、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。

少し分かりにくいので、例えば2026年中にその家から引っ越したとします。

この場合、一定の要件を満たせば、2029年12月31日までの売却が一つの目安になります。

ですから、

「もう引っ越して空き家になったから、居住用の3,000万円控除は使えない。」

と考える必要はありません。

ただし、期限があります。

売却を急ぐ必要がないからと何年もそのままにしているうちに、特例を使える期間を過ぎてしまうことも考えられます。

住み替えなどで以前の自宅が空き家になっている方は、「いつまでに売れば特例の対象になり得るのか」だけでも早めに確認しておくことをおすすめします。

家を解体して土地だけ売る場合はどうなる?


古い自宅を売却するとき、

「建物は古いから、解体して更地にしてから売りたい。」

ということもあります。

この場合も、一定の条件を満たせば居住用3,000万円控除を利用できる可能性があります。

ただし、建物を解体したあとについては注意が必要です。

原則として、建物を取り壊した日から1年以内に土地の売買契約を締結し、さらに、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。

もう一つ大切なのが、建物を取り壊してから売買契約を結ぶまで、その土地を貸駐車場など別の用途に使わないことです。

例えば、

「すぐには売れそうにないから、とりあえず月極駐車場にしておこう。」

こうした使い方をすると、特例の適用に影響する可能性があります。

不動産の売却では、

「古い建物を残して売るのか。」

「先に解体して更地で売るのか。」

を考える場面があります。

価格や売りやすさだけで決めたくなるところですが、3,000万円控除を利用する予定があるのであれば、税金の条件も確認してから解体の時期を決めた方がいいでしょう。

売却方法を先に決めてしまってから、

「このやり方だと特例が使えなかった。」

となるのは避けたいところです。

不動産をどう売るかと、税金の特例は別々に考えるのではなく、一緒に確認しながら進めることが大切だと思います。

親の家を相続した場合の「空き家3,000万円控除」

ここからが、先ほどの居住用3,000万円控除と混同しやすいところです。

例えば、親が一人で暮らしていた実家があり、その親が亡くなったことで家と土地を相続した。

その実家を売却するときに、一定の条件を満たせば利用できるのが、いわゆる「相続空き家の3,000万円特別控除」です。

正式には「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」といいます。

自分が住んでいた家ではないのに、なぜ3,000万円控除が使えるのか。

ここが先ほどの居住用3,000万円控除との大きな違いです。

ただし、相続した実家なら何でも対象になるわけではありません。

むしろこちらの特例は、建物や相続後の状態、売却時期などについて細かな条件があります。

相続した家なら何でも対象になるわけではありません


まず対象となる建物には、大きな条件があります。

代表的なものは、

昭和56年5月31日以前に建築された家であること。

つまり、いわゆる旧耐震基準の時代に建てられた住宅が対象です。

さらに、区分所有建物ではないことも条件です。

そのため、一般的な戸建住宅は対象になり得ますが、区分所有登記されたマンションの一室などは、この空き家特例の対象にはなりません。

もう一つ大切なのが、原則として、相続が始まる直前まで亡くなった方がその家に住んでいて、ほかに一緒に住んでいた人がいなかったことです。

例えば、

父親が亡くなったとき、実家には父親が一人で暮らしていた。

その家を子どもが相続した。

こうしたケースが、この制度を考える基本的な形です。

そして、相続してから売却するまでの間に、その家を誰かに貸したり、事業に使ったり、相続人などが住んだりしていないことも重要になります。

ここは実際の相談でも注意したいところです。

「親から相続した家だから3,000万円控除が使えるだろう。」

と思っていたものの、詳しく確認してみたら条件に合わなかった、ということも考えられます。

相続したという事実だけで判断しないことが大切です。

昭和56年5月31日以前の建物など、いくつかの条件があります


建築時期だけでなく、売却する時期にも期限があります。

この特例は、相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。

さらに、現在の制度では適用期限そのものが令和9年12月31日までとなっています。

また、売却代金が1億円以下であることなどの条件もあります。

建物を残したまま売却する場合には、一定の耐震基準を満たす必要があります。

一方、古い建物を解体して土地として売却する方法もあります。

ここで以前より使いやすくなった点があります。

令和6年1月1日以後の譲渡については、売却した時点で建物の耐震改修や解体が終わっていなくても、一定の条件のもと、売却した翌年2月15日までに耐震基準を満たす、または建物を取り壊すことで特例の対象になり得ます。

これは実際の不動産売却では大きな違いです。

以前は、

「売主様が先に解体して、更地にしてから売らなければならない。」

と考える場面が多かったのですが、現在は一定の条件を満たせば、売却後に買主様側で解体する形でも特例を利用できる可能性があります。

ただし、売買契約の内容や解体時期などをきちんと確認して進める必要があります。

「あとで壊せば大丈夫だろう」と自己判断するのではなく、売却方法を決める段階で確認しておきたいところです。

親が老人ホームに入っていた場合はどうなる?


これもよくありそうなケースです。

親が亡くなる直前まで実家で生活していたとは限りません。

高齢になって老人ホームへ入所し、そのまま実家へ戻らず亡くなることもあります。

「亡くなったときには実家に住んでいなかったから、空き家特例は使えない。」

と思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

一定の要介護認定などを受けて老人ホーム等へ入所していた場合には、その他の条件を満たすことで、この特例の対象になる可能性があります。

ただし、老人ホームへ入ったあとに、その実家を他人へ貸していたり、別の家族が住んでいたりすると話が変わってきます。

例えば、

「母が施設に入ったので、空いた実家に息子夫婦が住んでいた。」

このような場合は、単純に「母の実家だから対象」とは判断できません。

老人ホームへ入っていたという一つの事実だけを見るのではなく、その後、実家をどのように使っていたのかまで確認する必要があります。

兄弟3人以上で相続した場合は「3,000万円」ではないことも


もう一つ、現在の制度で特に注意したいのが相続人の人数です。

「3,000万円控除」という名前から、

兄弟3人で相続したら、それぞれ3,000万円ずつ控除できる。

そう思われるかもしれません。

しかし、令和6年1月1日以後の売却については、その家や敷地を相続または遺贈によって取得した相続人が3人以上いる場合、控除額は1人あたり最高2,000万円となります。

例えば兄弟3人で対象となる実家を相続して売却する場合、

3,000万円×3人=最大9,000万円

と単純に考えることはできません。

一定の場合には、

2,000万円×3人=最大6,000万円

ということになります。

一方、相続人が2人で、それぞれが特例の条件を満たしているのであれば、それぞれ最高3,000万円の控除を受けられる可能性があります。

このあたりまで来ると、「3,000万円控除」という言葉だけでは判断できないことがお分かりいただけると思います。

誰が住んでいたのか。

いつ建てられた家なのか。

相続してから誰かが使っていないか。

いつまでに売却するのか。

何人で相続したのか。

相続した実家の3,000万円控除については、こうした条件を一つずつ確認していく必要があります。

自宅を売却するときの3,000万円控除と名前は似ていますが、中身はかなり違う制度です。

2つの「3,000万円控除」を並べて比べてみます

ここまで、自分が住んでいた家を売却する場合と、親などから相続した空き家を売却する場合について説明してきました。

どちらも「3,000万円控除」と呼ばれるため分かりにくいのですが、こうして並べてみると違いが見えてきます。

一番大きな違いは、やはり「誰が住んでいた家なのか」です。

「誰が住んでいた家なのか」が大きな違い


居住用3,000万円控除は、基本的に
自分が住んでいる、または以前住んでいた家を売却するときの特例です。

それに対して空き家の3,000万円控除は、基本的に亡くなった親などが住んでいた家を相続し、その後一定の条件を満たして売却するときの特例です。

例えば、親が亡くなり実家を相続した場合、

「実家だから居住用3,000万円控除が使える。」

というわけではありません。

その家に自分が住んでいたわけではないのであれば、まず検討するのは相続空き家の特例です。

反対に、自分が長年住んでいた家から引っ越し、その後空き家になっている場合。

こちらも「空き家になったから空き家の3,000万円控除」ではありません。

一定の期限内であれば、自分が住んでいた家として居住用3,000万円控除を検討することになります。

つまり、

今、空き家かどうかだけで判断するのではありません。

その家に誰が住んでいたのか、どういう経緯で自分が所有することになったのか。

ここを見ると、どちらの制度を確認すればいいのかが分かりやすくなります。

建築時期・売却期限・相続後の使い方にも違いがあります


もう一つ大きく違うのが、条件の多さです。

居住用3,000万円控除には、原則として「昭和56年5月31日以前に建てられた家でなければならない」といった建築時期の条件はありません。

一方、相続空き家の特例では、対象となる家屋が原則として昭和56年5月31日以前に建築されていることが条件になります。

売却までの期限についても、それぞれ基準になる日が違います。

自分が住んでいた家なら、住まなくなった日が一つの基準になります。

相続空き家なら、相続が始まった日が基準になります。

さらに相続空き家の場合は、相続してから売却するまでの間に、その家を誰かに貸したり、事業に使ったり、誰かが住んだりしていないかという点も重要になります。

同じ「3,000万円控除」でも、確認する内容はかなり違います。

比較表で見ると違いが分かりやすい

比較する項目 居住用3,000万円控除 相続空き家の3,000万円控除
基本となる家
自分が住んでいる・以前住んでいた家 亡くなった親などが住んでいた家
取得の経緯
購入などでも可 相続・遺贈による取得
建築時期
原則として建築時期の制限なし 原則、昭和56年5月31日以前に建築
所有期間
原則として長短を問わない 相続した一定の不動産が対象
売却までの主な期限
住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで※
売却価格
特例固有の1億円以下という要件なし 売却代金1億円以下
売却までの利用
条件に注意 貸付・事業・居住に使っていないことなどが重要
建物の耐震性
空き家特例のような旧耐震家屋を対象とした要件なし
建物を残して売る場合は耐震基準などの条件あり
控除額
最高3,000万円 原則最高3,000万円※
相続人が3人以上
― 一定の場合、1人最高2,000万円

 

※相続空き家の特例には、このほか現行制度自体の適用期限などの要件があります。

こうして比べると、

「どちらも3,000万円引けるから、ほとんど同じ制度」

ではないことが分かると思います。

私が売却のご相談をお受けするときも、最初から細かな税金の条件をすべて確認するというより、

「この家にはどなたが住んでいましたか?」

「いつ頃から空き家になっていますか?」

「相続されたのはいつですか?」

「相続してから誰かが住んだり、貸したりしていますか?」

こうしたところからお話を聞いていきます。

それだけでも、居住用の3,000万円控除を確認した方がよいのか、相続空き家の特例を確認した方がよいのか、おおよその方向が見えてきます。

もちろん、最終的に特例を適用できるかどうかは税務署や税理士などへの確認が必要です。

ただ、不動産を売却してから税金を考えるのではなく、売却方法を決める段階で「どの特例が使える可能性があるのか」を確認しておく。

これは、売却後の手残りを考えるうえでも大切なことだと思います。

実際の相談で間違えやすいケース

ここまで条件を読んで、

「何となく違いは分かったけれど、自分の場合はどうなんだろう?」

と思われた方もいるかもしれません。

実際の不動産は、教科書どおりのケースばかりではありません。

親が亡くなる前に施設へ入っていた。

相続したあと、しばらく家族が住んでいた。

建物が古いので、すでに解体してしまった。

こうした事情が一つ加わるだけでも、確認する内容が変わってきます。

ここでは、特に間違えやすいケースをいくつか見てみます。

相続した実家に自分が住んでから売却した


例えば、親が一人で暮らしていた実家を相続し、その後、相続人である子どもがその家に住んだとします。

この場合、

「もともと親が一人で住んでいた家だから、相続空き家の3,000万円控除が使えるのでは?」

と思うかもしれません。

ところが、相続空き家の特例では、相続してから売却するまでの間、その家を居住用として使っていないことなどが条件になります。

そのため、相続後に自分や家族が住んだ場合は、相続空き家の特例をそのまま使えるとは限りません。

一方、その家がその後、自分自身の生活の本拠となり、実際にマイホームとして暮らしたのであれば、売却時に今度は居住用3,000万円控除の対象になり得るかという別の検討が出てきます。

ここで大切なのは、

「相続した家だから空き家特例」

と最初から決めてしまわないことです。

相続したあと、その家をどう使ったのかによって確認する制度が変わることがあります。

相続後に誰かに貸していた


これも注意したいケースです。

親から相続した実家をすぐには売らず、

「空けておくのはもったいないから、しばらく人に貸そう。」

と考えることもあるでしょう。

不動産の活用方法として賃貸にすること自体が悪いわけではありません。

ただ、将来、相続空き家の3,000万円控除を利用して売却する可能性があるのであれば、先に確認しておきたいところです。

相続空き家の特例では、相続してから売却するまで、対象となる家屋や敷地を貸付けや事業、居住のために使用していないことなどが要件になります。

そのため、

「とりあえず2、3年だけ貸して、そのあと売れば3,000万円控除を使えるだろう。」

とは考えない方がいいでしょう。

売るか、貸すか。

相続した実家では、この選択が税金にも関係してくることがあります。

目先の家賃収入だけではなく、将来売却する可能性まで含めて考えてから決めたいところです。

親が亡くなったあと、兄弟の一人が住んでいた


例えば、父親が一人で暮らしていた実家を、父親が亡くなったあと兄弟3人で相続したとします。

その後、

「弟はまだ住むところが決まっていないから、しばらく実家に住んでもらおう。」

こういうこともあり得ます。

ところが、先ほどと同じように、相続空き家の特例では相続後の家の使い方が重要になります。

「父親が一人暮らしだった。」

「昭和56年5月31日以前の建物だった。」

ここまで条件に合っていても、その後の利用状況によっては特例を使えなくなる可能性があります。

相続した直後は、

「売るかどうか、まだ決めていない。」

というご家族も多いと思います。

それは当然です。

ただ、将来的に売却する可能性があるのであれば、誰かが住む、貸す、事業に使うといったことを決める前に、空き家特例への影響だけは確認しておいた方がいいでしょう。

知らずに条件から外れてしまうのは、もったいないと思います。

建物を解体して更地で売却した


相続した実家がかなり古い場合、

「この建物はもう使えないから、解体して土地として売ろう。」

というケースもあります。

相続空き家の特例は、「空き家」という名前が付いているので、

「建物を壊したら使えないのでは?」

と思われるかもしれません。

しかし、一定の要件を満たして建物を取り壊し、敷地を売却した場合も特例の対象になり得ます。

また、現在の制度では、一定の条件を満たせば、売却したあとに買主様側で建物を取り壊す形でも対象になる可能性があります。

ここは不動産の売り方にも関係します。

古い家の場合、

売主様が費用をかけて先に解体するのか。

古家付き土地として売却し、買主様が購入後に解体するのか。

どちらがいいのかは物件によって違います。

以前であれば空き家特例を利用するために、売主様側で先に解体することを考えるケースもありました。

現在は制度が変わり、売却後の解体でも一定の条件を満たせば対象になり得るため、売却方法の選択肢は以前より広がっています。

ただし、ここで注意したいのが期限です。

「買主様がそのうち解体してくれればいい。」

というわけではありません。

定められた期限までに解体され、必要な書類を揃えることなどが必要になります。

ですから、買主様による解体を前提に空き家特例を利用するのであれば、売買契約を結ぶ段階からそのことを考えておく必要があります。

税金は売却が終わってから考えるものと思われがちですが、相続した空き家については、売る前の使い方や売り方そのものが特例に関係することがあります。

だからこそ、実家を相続した時点で、

「今すぐ売るつもりはないから、税金のことはまだ先でいい。」

と考えるのではなく、将来売る可能性があるなら、一度確認しておくことをおすすめします。

3,000万円控除が使えれば、必ず税金がゼロになる?

「3,000万円控除が使えるなら、税金はかからない。」

そう思われる方もいるかもしれません。

確かに、売却によって出た譲渡所得が3,000万円以内で、特例を満額使えるのであれば、課税される譲渡所得が0円になるケースはあります。

ただし、譲渡所得が3,000万円を超えていれば、控除したあとの金額に対して税金がかかります。

そして実際の売却では、3,000万円控除だけを見るのではなく、その前に「そもそも譲渡所得がいくらになるのか」を確認することが大切です。

まず「譲渡所得」がいくらになるのかを計算します


不動産を売却したときの税金は、売却価格そのものにかかるわけではありません。

基本的な考え方は、

売却価格 -(取得費+譲渡費用)= 譲渡所得

です。

例えば、

売却価格 5,000万円
取得費 1,500万円
譲渡費用 300万円

だったとします。

この場合、

5,000万円-(1,500万円+300万円)=3,200万円

譲渡所得は3,200万円です。

ここで3,000万円の特別控除を満額利用できれば、

3,200万円-3,000万円=200万円

この200万円が、税率をかける前の課税譲渡所得になります。

反対に、譲渡所得が2,000万円だった場合に3,000万円控除を使えれば、課税譲渡所得は0円になります。

つまり、

「いくらで売れたのか」

だけでは税金は分かりません。

いくらで取得した不動産なのか。

売却するためにどのくらいの費用がかかったのか。

そして、どの特例を利用できるのか。

これらを順番に見ていく必要があります。

昔の売買契約書があるかどうかで税額が変わることがあります


ここは、特に相続した実家の売却で確認していただきたいところです。

親が30年、40年前に購入した家の場合、

「昔のことだから、いくらで買ったのか分からない。」

ということがあります。

でも、相続した不動産だからといって、取得費が相続した時点の価格になるわけではありません。

原則として、亡くなった方がその不動産を取得したときの取得費を相続人が引き継ぎます。

ですから、実家を売却することになったら、まず探していただきたいのが、親御さんが購入した当時の売買契約書などです。

例えば、4,000万円で売却した不動産について、

昔2,500万円で購入したことを資料で確認できる場合と、購入価格がまったく分からない場合。

同じ4,000万円で売れたとしても、譲渡所得の計算結果が大きく変わることがあります。

古い契約書だから必要ないだろう。

そう思って処分してしまわないでください。

相続した実家の売却では、何十年前の書類が税金の計算で大切な資料になることがあります。

取得費が分からない場合の「概算取得費5%」とは


では、昔の売買契約書などがどうしても見つからず、取得費が分からない場合はどうするのでしょうか。

この場合、売却した金額の5%を取得費とする「概算取得費」を使って計算する方法があります。

例えば、4,000万円で売却した場合。

取得費が分からず5%で計算すると、

4,000万円×5%=200万円

取得費は200万円となります。

実際には昔2,000万円、3,000万円で購入していたとしても、それを確認できず概算取得費を使うことになれば、譲渡所得が大きく計算される可能性があります。

だからこそ、私は相続した実家の売却相談では、

「購入した当時の契約書は残っていませんか?」

という確認は大切だと思っています。

実家の片付けをしていると、古い権利証や図面、契約書、領収書などがまとめて出てくることがあります。

何十年も前の書類ですから、

「もう使わないだろう。」

と捨てたくなるかもしれません。

でも、不動産関係の書類については、売却と税金の確認が終わるまでは、ひとまず残しておくことをおすすめします。

また、契約書が見つからないからといって、すぐに「取得費は5%しか認められない」と決めつける必要もありません。

当時の資料などから取得費を確認できる可能性がないか、税理士や税務署などへ相談してみる価値はあります。

3,000万円控除は確かに大きな特例です。

ただ、

「3,000万円控除が使えるかどうか」だけで税金を考えない。

まず譲渡所得を計算する。

そのために取得費を確認する。

そのうえで、使える特例を確認する。

この順番で考えると、不動産を売却したあとの手残りも、より現実的に考えられるようになります。

売却してから「使えなかった」とならないために


ここまで見てきたように、2つの3,000万円控除は、どちらも条件を満たせば大きな節税につながる制度です。

その一方で、売却する時期や家の使い方、建物を解体するタイミングなどによって、特例を使えるかどうかが変わることがあります。

不動産を売却したあとになって、

「3,000万円控除が使えると思っていたのに、対象にならなかった。」

これはできれば避けたいところです。

特に相続した実家については、売却を決めてからではなく、売却を考え始めた段階で確認しておくことをおすすめします。

特に相続空き家の特例は売却前に確認しておきたい


自分が住んでいた家の3,000万円控除と比べると、相続空き家の特例は確認する項目が多くあります。

建物がいつ建てられたのか。

亡くなった方がどのように住んでいたのか。

相続してから誰かが住んだり、貸したりしていないか。

建物を残して売るのか、解体して売るのか。

相続人は何人いるのか。

そして、いつまでに売却する必要があるのか。

こうしたことが関係してきます。

だからこそ、

「売却が決まったら税金を調べればいい。」

では少し遅い場合があります。

例えば、相続した実家をとりあえず賃貸に出す。

古いから先に解体する。

兄弟の一人がしばらく住む。

不動産としてはそれぞれ選択肢の一つですが、空き家特例を利用したいのであれば、その前に税務上の影響を確認しておいた方がいいでしょう。

売却するかどうか決まっていなくても、確認だけは先にしておく。

相続した実家については、それくらいでちょうどいいと思います。

不動産会社・税務署・税理士、それぞれに確認すること


不動産を売却するとき、

「税金のことも不動産会社に全部聞けば分かるのでは?」

と思われるかもしれません。

もちろん、不動産会社でも一般的な制度の説明や、売却方法についてのご相談はできます。

例えば、

どのくらいの価格で売れそうか。

古家付きで売るのか、更地にして売るのか。

仲介で売却するのか、買取を選ぶのか。

どのくらいの期間がかかりそうか。

こうしたことは、不動産会社が具体的にお話しできる部分です。

また、3,000万円控除を利用する可能性があるのであれば、それを考慮して売却方法やスケジュールを検討することもできます。

一方で、最終的に税金の特例が適用できるかどうかは、個別の事情によって判断が変わります。

そのため、税務上の最終確認については、税務署や税理士などの専門家へ確認することが大切です。

不動産会社と税理士、どちらか一方だけに相談するというより、

不動産の売り方は不動産会社、税金の最終判断は税務署や税理士。

それぞれの専門分野を使い分けながら進めるのが分かりやすいと思います。

売却価格ではなく「手元にいくら残るか」まで考える


不動産を売却するとき、どうしても最初に気になるのは売却価格です。

3,000万円で売れるのか。

3,500万円で売れるのか。

もちろん価格は大切です。

ただ、最終的に大切なのは、売却価格だけではなく、そこから諸費用や税金などを差し引いて手元にいくら残るのかではないでしょうか。

例えば、少し高く売れたとしても、売却までに長い期間がかかり、その間の維持費が増えることもあります。

反対に、解体費用をかけることで売りやすくなる場合もあれば、建物を残したまま売却した方が結果的に負担を抑えられる場合もあります。

さらに、3,000万円控除などの特例を利用できるかどうかによって、税引き後の手残りが変わることもあります。

だから私は、不動産の売却を考えるときには、

「いくらで売れるか」だけではなく、「最終的にいくら残るのか」まで見て判断することが大切

だと考えています。

特に相続した実家の場合は、解体、測量、残置物の処分、登記など、売却前に費用がかかることもあります。

そこへ税金まで含めて考えると、単純に売却価格だけを比べても、本当に有利な方法は分かりません。

仲介で時間をかけて売るのか。

買取で早く整理するのか。

建物を残すのか。

解体するのか。

そして、利用できる税金の特例はあるのか。

こうしたことを一緒に整理して、最終的な手残りまで見ながら売却方法を考えていくことが大切です。

まとめ


ここまで、自分が住んでいた家を売却するときの「居住用3,000万円控除」と、親などから相続した実家を売却するときの「相続空き家の3,000万円控除」についてお話ししてきました。

名前はよく似ていますが、対象となる家や条件はかなり違います。

まずは、自分の場合はどちらの制度を確認すればいいのか。

そこから整理してみてください。

自分が住んでいた家なのか、親から相続した家なのか


一番分かりやすい入口は、やはり**「誰が住んでいた家なのか」**です。

自分が住んでいる、または以前住んでいた家なら、まず居住用3,000万円控除を確認します。

一方、親などが住んでいた家を相続して売却するのであれば、相続空き家の3,000万円控除を確認することになります。

ただし、どちらもそれだけで特例が使えると決まるわけではありません。

売却する時期や家の使い方など、それぞれの条件を確認する必要があります。

同じ「3,000万円控除」という言葉だけで判断しない


今回、一番お伝えしたかったのはここです。

「3,000万円控除が使えるらしい。」

この言葉だけで売却後の税金を判断しないでください。

3,000万円というのは売却価格から引く金額ではなく、条件を満たした場合に譲渡所得から控除する金額です。

そして、自宅の3,000万円控除と相続空き家の3,000万円控除では、その条件も違います。

さらに、相続した不動産の場合は、親御さんが購入した当時の売買契約書などが残っているかどうかも重要です。

売却を考え始めたら、物件のことだけでなく、昔の契約書や関係書類も一度探してみてください。

実家を売却するなら、税金も含めて早めに確認しておきましょう


相続した実家については、

「まだ売ると決めていない。」

という段階でも構いません。

売るのか。

残すのか。

貸すのか。

建物を解体するのか。

家族の誰かが使うのか。

選択肢はいくつもあります。

ただ、その選択によって税金の特例に影響することがあります。

だからこそ、何かを決めてしまう前に、一度整理しておくことが大切です。

株式会社エステージでは、静岡市を中心に、自宅や相続した実家、空き家などの売却相談をお受けしています。

まだ売却すると決めていなくても、

「この家はいくらくらいで売れそうなのか。」

「古い建物は残した方がいいのか、解体した方がいいのか。」

「仲介と買取では、手元に残る金額がどのくらい違うのか。」

こうしたところからご相談いただいて構いません。

税金について最終的な判断が必要な場合には、税務署や税理士などへの確認も含めて進めていただくことになります。

売ってから税金を考えるのではなく、売り方を決める前に税金のことも確認しておく。

特に相続した実家の売却では、それが大切だと思います。