不動産基礎知識
2026年09月18日

静岡県の住宅地は18年連続下落。でも静岡市を3区に分けると違う景色が見えてきました

9月16日、2026年(令和8年)の静岡県基準地価が発表されました。

県内の住宅地は18年連続の下落。ニュースだけを見ると、「静岡の土地はまだ下がっている」と受け取ってしまいそうです。

ただ、静岡市で不動産の査定や売却に携わっている私としては、今回の数字を見て少し違う印象を持ちました。

静岡市を3区に分けてみると、住宅地は葵区が2.0%上昇、駿河区が1.4%上昇。一方、清水区は0.4%の下落です。

さらに基準地を見てみると、葵区は住宅地・商業地・工業地を合わせた38地点のうち、下落したのは2地点。駿河区も26地点のうち1地点しかありません。それに対して清水区は、33地点のうち14地点が下落しています。

同じ静岡市で、これだけ違います。

不動産の査定をしていると、同じ町内でも道路一本違うだけで土地の評価が変わることがあります。ですから「静岡県は下落」「静岡市は上昇」という大きなくくりだけで、ご自分の土地の価格を考えるのは少し違います。

むしろ今回の数字を見て私が感じたのは、土地全体が上がっている、下がっているということよりも、選ばれる土地とそうでない土地の差が、以前よりはっきりしてきているのではないかということです。

今回は、発表された数字を紹介するだけではなく、静岡市で不動産を扱っている立場から、2026年の基準地価をもう少し細かく見てみたいと思います。

2026年、静岡県の基準地価はどうなった?

県全体では下落でも、すべての住宅地が下がっているわけではない

2026年の静岡県基準地価では、住宅地の平均変動率は前年比0.1%の下落となりました。これで18年連続の下落です。

一方、商業地は0.9%上昇、工業地も0.8%上昇しています。

「住宅地は18年連続下落」。

見出しとしては分かりやすいのですが、この言葉だけで今回の地価動向を捉えると、実際とは少し違って見えるように思います。

県の発表でも、住宅地については上昇地点が増え、下落地点が減っています。また、過疎地域や自然災害への懸念がある地域では下落が続く一方、住環境や利便性の良い地域では上昇が見られるとしています。

県内の住宅地が一斉に0.1%下がったわけではありません。

上がった地域もあれば、下がった地域もある。その両方を合わせた県平均がマイナス0.1%です。

不動産の価格を見るとき、この「平均」は便利である一方、少し注意が必要です。

例えば、自分の土地がある地域で地価が上昇していても、その土地まで同じ割合で上昇しているとは限りません。反対に、地域の平均が下落していても、条件の良い土地まで同じように下がるとは限りません。

今回の静岡市の数字を見ると、そのことがよく分かります。

県内で最も高い住宅地と商業地は、今年も静岡市葵区

今回の基準地価で、県内の住宅地で最も価格が高かったのは静岡市葵区西草深町で、1平方メートル当たり34万円でした。

商業地の最高価格も静岡市葵区呉服町で、1平方メートル当たり152万円です。

静岡市で不動産を扱っていれば、葵区中心部やその周辺の土地が高いこと自体に、それほど驚きはありません。

ただ、ここでも注意したいのが「葵区」というくくりです。

葵区は中心市街地から郊外、中山間地域まで非常に広く、同じ区内でも土地価格にはかなりの差があります。

「葵区の土地はいくらくらいですか?」

こう聞かれても、実際には場所を確認しなければ答えようがありません。

県内で最も高い住宅地も葵区ですが、それだけを見て葵区全体の土地価格が高いと考えることもできません。

基準地価を見るときには、「どこの区なのか」から、もう一段細かく「どこの地域なのか」まで見る必要があります。

静岡市を3区に分けてみると、違いがはっきりします

葵区・駿河区はほとんどの基準地で上昇・横ばい

今回、私が一番興味を持ったのはここです。

葵区では住宅地22地点、商業地15地点、工業地1地点、合計38地点が調査されています。

そのうち、前年より下落したのは2地点です。

駿河区は住宅地15地点、商業地8地点、工業地3地点の合計26地点。そのうち下落したのは1地点でした。

住宅地の平均変動率を見ても、葵区は2.0%上昇、駿河区は1.4%上昇しています。

県全体の住宅地が0.1%下落していることだけを見ていたら、この動きは分かりません。

私は平均変動率以上に、「下落した地点がこれだけ少なかった」というところに目がいきました。

一部の人気エリアだけの話なのか、それとももう少し広い範囲で地価が動いているのか。この二つでは意味が違うからです。

葵区38地点のうち下落が2地点、駿河区26地点のうち1地点という結果を見ると、少なくとも今回の調査では、地価の底堅さが比較的広い地点で確認できたと見ることができます。

ただ、ここから先は実際の売買市場を見る必要があります。

静岡市で住宅を探しているお客様には、当然予算があります。

今は土地価格だけではなく、建築費も以前より高くなっています。土地が上がれば、その分だけ総予算も上がってしまいます。

最終的には「この場所なら、この土地価格を出してもいい」と思っていただけるかどうか。

公表地価が上昇している地域でも、実際の売買ではこの感覚とのズレがないかを見る必要があります。

清水区は33地点のうち14地点が下落

一方、清水区は少し違った結果になりました。

住宅地21地点、商業地8地点、工業地4地点の合計33地点。そのうち14地点が前年より下落しています。

住宅地の平均変動率も0.4%の下落です。

葵区、駿河区と並べてみると、この違いはかなりはっきりしています。

ただ、私はこの数字から「清水区は弱い」とひとまとめにしてしまうのも違うと思っています。

33地点のうち14地点が下落したということは、残り19地点は少なくとも下落していません。

清水区は広く、JR清水駅周辺と草薙方面、住宅地、沿岸部、山側では土地の性格が違います。

同じ清水区内でも、購入するお客様から見た利便性や住環境、災害リスクなどは一様ではありません。

だからこそ、今回の「33地点中14地点下落」という数字は興味深いと思います。

清水区全体が下がっていると見るより、同じ区の中でも評価が分かれていると考えた方が、実際の不動産市場を見るうえでは自然ではないでしょうか。

なぜ同じ静岡市でも土地価格の動きに差が出るのか

今は「どこでもいいから土地が欲しい」ではありません

土地を探しているお客様と話をすると、それぞれかなり具体的な条件を持っています。

通勤しやすい場所がいい。子どもの学校区を変えたくない。買い物に便利な場所がいい。できれば平坦地がいい。車を2台、できれば3台置きたい。

そして、当然そこには予算があります。

特に今は建築費が上がっています。

土地に予算をかけ過ぎれば建物にしわ寄せがいきますから、「良い場所だから多少高くても」というだけでは決められないお客様も多いと思います。

例えば同じ3,000万円の土地でも、その場所なら3,000万円出しても欲しいと思う方がいる一方、場所が少し変われば「この価格ならほかも探してみよう」となることがあります。

売る側からすると同じ土地ですが、買う側には比較する土地があります。

この「選ばれる」という視点は、土地価格を考えるときにかなり重要です。

人口が減少すれば土地価格も全部下がる、というほど単純ではありません。

人口が減る中でも、住みたいと思う人が集まる地域があります。

そう考えると、これからは「静岡市に土地を持っている」ではなく、「静岡市のどこに、どんな土地を持っているのか」が今まで以上に価格へ影響してくるように思います。

災害リスクを見るお客様も増れています

静岡で不動産を扱っている以上、災害リスクは避けて通れません。

地震、津波、浸水、土砂災害。

最近は物件をご紹介すると、ご自身でハザードマップを確認されているお客様も珍しくありません。

以前に比べ、購入する側が災害リスクを意識するようになっていることは、実際のご案内でも感じます。

もちろん、ハザードエリアに入っているから売れないということではありません。

利便性を優先する方もいますし、土地の広さや価格とのバランスで選ばれることもあります。

県も今回の地価調査で、自然災害への懸念がある地域では住宅地の下落が続いているとしています。

ただし、清水区の住宅地が0.4%下落した理由を、すべて災害リスクに結びつけるのは違います。

人口の動き、生活利便性、住宅需要、土地の供給など、土地価格は一つの理由だけで決まるものではありません。

災害リスクも、その中の一つ。

ただ、購入する方が土地を選ぶ条件として、その比重が以前より大きくなっていることは、静岡市の土地価格を考えるうえで見逃せない部分だと思います。

葵区は2%上昇」なら、自宅も2%上がったのか?

同じ町内でも土地の値段は違います

葵区の住宅地が平均2.0%上昇したと聞けば、

「それなら自分の土地も去年より2%くらい上がったのでは?」

と思うかもしれません。

ここは、そう単純ではありません。

査定をしていると、同じ町内なのに「なぜこちらの土地の方が高いのですか」と聞かれることがあります。

道路幅が違う。間口が違う。土地の形が違う。

地図で見ればすぐ近くでも、現地へ行ってみると条件がまったく違うことがあります。

例えば同じ50坪の土地でも、一方は6メートル道路に広く接した整形地。もう一方は4メートル道路で間口が狭く、奥に長い土地。

面積だけなら同じ50坪です。

でも、家を建てる側から見れば、建物の配置も駐車場の取り方も変わります。

さらに角地なのか、道路の向きはどうか、高低差はあるか、車の出入りはしやすいか。

こうした違いが価格に表れます。

「○○町で坪60万円の成約事例があったから、うちも60万円」

これもそのままでは使えません。

その土地と自分の土地の何が同じで、何が違うのか。

査定では、むしろそこを見ることの方が重要です。

私が土地の査定では必ず現地を見るのも、机の上の数字だけでは分からないことがあるからです。

基準地価は「その土地が実際に売れる価格」ではありません

基準地価は、都道府県が毎年7月1日時点の基準地について調査し、公表する土地価格です。

地域の地価がどちらへ動いているのかを見るには、とても参考になります。

ただし、

基準地価=実際に売れる価格

ではありません。

土地の価格には、ほかにも地価公示、相続税路線価などの公的な指標があります。

私が査定をするときも、こうした数字を確認します。

ただ、それだけでは価格は決めません。

周辺で現在いくらで土地が売りに出されているのか。

実際にはいくらで成約したのか。

その土地はどのくらいの期間で売れたのか。

そして、査定する土地の道路付け、間口、形状、面積などはどうなのか。

こうしたものを重ねて見ていきます。

公的な土地価格と実際の市場価格。

どちらか一方だけを見るのではなく、両方を見たうえで「この土地ならどうか」を考える。

これが実際の査定に近いと思います。

基準地価が上がっているのに、なかなか売れないこともあります

売出価格と売れる価格は同じではありません

不動産の査定をしていると、周辺の売出物件を見て、

「近所が坪50万円で出しているから、うちも坪50万円くらいでしょう」

という話になることがあります。

でも、その土地は「坪50万円で売れた土地」ではありません。

まだ「坪50万円で売りに出している土地」です。

ここは似ているようで、かなり違います。

売主様が希望する価格で市場に出すことはできます。

しかし、その価格で買主様が現れるかどうかは別です。

半年間売れていない坪50万円の土地と、売り出してすぐ坪48万円で成約した土地があったとしたら、査定するときにどちらを重く見るか。

私は当然、両方を確認します。

そのうえで、なぜ一方は売れて、もう一方は売れていないのかを考えます。

価格なのか、土地の条件なのか、それとも両方なのか。

基準地価が上昇している地域でも、相場とかけ離れた価格で売り出せば長期間売れないことがあります。

反対に地価が下落している地域でも、土地の条件と価格が合えば早く買主様が見つかることがあります。

これが公表される地価と、実際の売買市場との違いです。

最後は「その価格で買いたい人がいるか」を見る

土地には、公的な価格があります。

査定方法もあります。

過去の成約事例もあります。

それでも最後に不動産を買うのは、一人のお客様です。

「この土地なら、この金額を払っても欲しい」

そう思っていただいて初めて売買は成立します。

私は査定価格を考えるとき、「計算上いくらになるか」だけではなく、その価格帯で実際に買うお客様がいるのかというところも見ています。

高い査定価格を付けること自体は難しくありません。

ただ、高い査定価格と高く売れることは別の話です。

逆に、基準地価が下落している地域だからという理由だけで、必要以上に低く見ることもありません。

数字は大事です。

でも、その数字が実際の市場でどう動いているのか。

不動産会社の仕事は、そこまで見ることだと思っています。

今回の基準地価を見て、私が感じたこと

「静岡市の土地相場」だけでは分からなくなっている

今回の基準地価を見て、私が一番感じたのは「静岡市の土地相場」という言葉だけでは、実際の価格を説明しにくくなっているということです。

葵区と駿河区では住宅地が上昇し、清水区では下落しました。

さらに、それぞれの区の中でも動きは違います。

新聞やニュースでは、県平均、市平均、区ごとの平均という数字で紹介されます。

全体の動きを知るには、それでいいと思います。

ただ、自分の不動産について考えるのであれば、平均からもう一段、二段細かく見なければなりません。

静岡市なのか。

何区なのか。

どの地域なのか。

そして最後は、どんな土地なのか。

土地の価格は、細かく見れば見るほど個別性が強くなります。

今回の基準地価は、そのことを改めて感じさせる結果だったと思います。

これからは土地ごとの条件による差がさらに重要になる

これから静岡市のすべての土地が同じように上がっていくとは考えにくいと思います。

一方で、人口が減るからすべての土地が同じように下がっていく、と考えるのも違うでしょう。

利便性が良い。

住環境が良い。

道路条件が良い。

使いやすい広さや形をしている。

災害リスクが比較的低い。

そうした条件を持つ土地は、購入する側から見ても理由があります。

反対に、何らかの条件が弱い土地は、同じ地域の相場だけを見て価格を付けても、売却まで時間がかかることがあります。

よく「地価の二極化」と言われます。

ただ、今回の静岡市の数字を見ていると、私は二つに分かれるというより、土地の選別が以前より細かくなっていると考えた方が実際の市場には近いように感じます。

静岡市だから。

葵区だから。

○○町だから。

それだけではなく、その先にある「この土地だから」というところまで見る。

これから土地の価格を考えるうえでは、そこがさらに重要になってくると思います。

まとめ

「静岡の土地は上がった・下がった」だけで判断しない

2026年の静岡県基準地価では、県内の住宅地は18年連続の下落となりました。

ただ、静岡市に絞ると住宅地は葵区が2.0%上昇、駿河区が1.4%上昇し、清水区は0.4%下落しています。

県全体の数字と静岡市の数字では見え方が違い、静岡市の中でも3区で動きが違います。

さらに区の中を見れば、地域によって違う。

そして実際の土地は、一つ一つ条件が違います。

そう考えると、

「静岡県の住宅地は18年連続下落」

というニュースだけで、ご自分の土地の価値まで判断することはできません。

反対に「葵区は2%上昇したから、自宅も2%高くなった」と考えることもできません。

基準地価は相場の方向を見る材料。

自分の不動産の価格は、そこから先を見ていく必要があります。

自分の不動産が今いくらなのかを個別に見ることが大切

道路の幅、間口、土地の形、向き、面積、高低差、周辺環境、災害リスク。

そこに周辺の売出事例や実際の成約事例、公的な土地価格を重ねていくと、その土地の現在の姿が見えてきます。

売却する予定がまだなくても、

「今、自分の土地はいくらくらいなのだろう」

と知っておくことに意味はあると思います。

特に相続した実家や、これから先どうするか決めていない土地であれば、なおさらです。

査定をしたから売らなければならないわけではありません。

今の価値を知ったうえで、売るのか、残すのか、それとももう少し様子を見るのかを考えればいい。

不動産は金額が分からないまま考えるより、ある程度の数字が分かった方が選択肢を比較しやすくなります。

今回の基準地価も、「静岡の土地が上がった、下がった」というニュースとして見るだけでなく、ご自分の不動産はどうなのだろうと考えてみる一つの材料にしていただければと思います。