『いつかやろう』で5年過ぎた実家の話

「気付いたら5年経っていました。」
相続不動産の相談を受けていると、驚くほどよく聞く言葉です。
もちろん最初から放置するつもりだったわけではありません。
お父様が亡くなった直後は、相続手続きだけで精一杯。
四十九日や法要もある。
仕事もある。
家族の生活もある。
実家のことは気になっていても、
「落ち着いたら考えよう」
そう思うのは自然なことです。
そして気付けば一年。
まだ荷物はそのまま。
仏壇もそのまま。
庭木も少し伸びてきた。
でも、
「今年中には何とかしよう」
と思っているうちに、また一年が過ぎます。
先日ご相談いただいたお客様もそうでした。
静岡市内のご実家を相続された方です。
最初は年に何度か実家へ行っていたそうです。
ところが仕事や子育てが忙しくなり、だんだん足が遠のきました。
久しぶりに訪れた実家は、以前より少しだけ古く見えたそうです。
庭木は大きくなり、雑草も増えていました。
郵便受けにはチラシが溜まり、誰も住んでいない家特有の静けさがありました。
その時、お客様がぽつりと言った言葉が印象に残っています。
「放置していたつもりはなかったんです。」
本当にその通りだと思います。
実家を放置したい人なんていません。
ただ、実家の問題は急がなくても困らないことが多いのです。
だから後回しになってしまいます。
しかし、人が住まなくなった家は待ってくれません。
建物も庭も、少しずつ時間が進んでいきます。
今回は、静岡市でも増えている相続不動産の相談の中から、
『いつかやろう』と思っていたら5年過ぎていた実家の話をしたいと思います。
相続問題や空き家管理、実家売却を考えている方だけでなく、
「まだ何も決まっていない」
という方にも読んでいただきたい内容です。
「いつかやろう」と思っていたら5年経っていた

相続不動産の相談を受けていると、
実は5年という数字は珍しくありません。
3年。
5年。
時には10年以上。
相続した実家がそのままになっているケースもあります。
ただ、ここで誤解してほしくないのは、
皆さん決して無責任なわけではないということです。
むしろ真面目な方ほど後回しになっているように感じます。
相続した直後は考えられなくて当然
親御さんが亡くなった直後は、本当に慌ただしいものです。
葬儀。
法要。
相続手続き。
名義変更。
銀行。
保険。
やることがたくさんあります。
実家のことを考える余裕などありません。
実際、
「まだ気持ちの整理がつかない」
という方も多くいらっしゃいます。
特に長年住んでいた実家であればあるほど、
思い出もあります。
アルバムもあります。
親御さんが使っていた家具もあります。
だから簡単に売却という結論にはなりません。
私もそれで良いと思っています。
相続したその日に答えを出す必要なんてありません。
ただ、そのまま時間だけが過ぎていくことがあります。
実家のことは後回しになりやすい
例えば、ご相談いただく方の多くは50代から60代です。
まだ現役で仕事をしています。
お子さんの進学や独立もあります。
ご自身の家庭もあります。
そして実家は静岡。
自分は東京や神奈川。
そんなケースも少なくありません。
すると、
「今度帰省した時にやろう」
になります。
荷物の整理も。
草刈りも。
相続不動産の売却も。
全部あとで。
もちろん最初はそのつもりです。
しかし一年は本当に早い。
お盆が終わる。
年末が来る。
お正月が終わる。
気付けばまたお盆。
そして、
「今年こそ何とかしよう」
と思いながら時間だけが過ぎていきます。
実家はそこにあるので、
何となく安心してしまうのです。
相続不動産で本当によくある話

私が静岡市で相続不動産の相談を受けていると、
実はよく似た流れがあります。
もちろん家族構成も事情も違います。
それでも驚くほど共通しています。
最初の1年はあっという間に過ぎる
相続した直後は、
まだ実家へ行く機会があります。
法要もあります。
親戚も集まります。
荷物の整理も少し始めます。
ところが1年を過ぎる頃から変化します。
実家へ行く理由が減るのです。
誰も住んでいない。
使う予定もない。
でも処分する決心もついていない。
そうなると足が遠のきます。
そして建物の変化にも気付きにくくなります。
気付けば空き家管理だけが続いている
相談の中でよく聞く言葉があります。
「毎年固定資産税だけ払っています。」
実はこれも非常に多いです。
管理はしている。
税金も払っている。
草もたまに刈っている。
でも実家をどうするかは決まっていない。
その状態が何年も続いています。
もちろん悪いことではありません。
ただ、相続不動産は持っているだけでもお金が掛かります。
固定資産税。
火災保険。
草刈り。
空き家管理。
場合によっては修繕費。
そして何より、
時間が経つほど建物の価値は下がりやすくなります。
実際に相談へ伺うと、
「もっと早く相談すれば良かったかな」
と言われることがあります。
でも私は、
5年経ったから遅いとは思いません。
本当に遅いのは、
誰にも相談しないままさらに5年過ぎることだと思っています。
5年の間に実家はどう変わるのか

人間は毎日会っている家族の変化に気付きにくいと言います。
実家も少し似ています。
年に数回しか行かないと、
変化に気付きません。
ところが数年ぶりに見ると、
驚くほど印象が変わっていることがあります。
そしてその変化は、
築年数ではなく、
「誰も住んでいなかった時間」
が作っていることも少なくありません。
建物はゆっくり老けていく
私は以前、
空き家は人と似ていると思うと書いたことがあります。
急に老けるわけではありません。
少しずつです。
換気が減る。
掃除が減る。
水を使わなくなる。
そうすると家も少しずつ元気がなくなります。
最初は小さな変化です。
しかし5年という時間は決して短くありません。
久しぶりに訪れた実家が、
思った以上に古く見えた。
そんな経験をされた方もいるのではないでしょうか。
庭木や雑草は正直に時間を教えてくれる
特に分かりやすいのが庭です。
建物より正直かもしれません。
伸びた庭木。
増えた雑草。
使われていない駐車場。
それらは、
「ここに人が住んでいません」
と静かに教えてくれます。
実際、購入希望者が最初に見るのも庭だったりします。
家の中ではありません。
玄関へ向かうまでの印象です。
だから私は売却相談の時、
まず庭を見ることが多いです。
庭を見ると、その家が過ごしてきた時間が何となく分かるからです。
実家を放置しているつもりはない人がほとんど

相続不動産の相談を受けていて、私がいつも感じることがあります。
それは、
実家を放置している人はほとんどいない
ということです。
むしろ皆さん気にしています。
気になっているからこそ相談に来られます。
気になっているからこそ固定資産税も払い続けています。
お盆には顔を出す。
年末にも様子を見る。
草が伸びれば草刈りをする。
だから本人としては、
「放置しているつもりはない」
のです。
実際、その通りだと思います。
ただ、
気に掛けていることと、
今後どうするかを決めることは別の話です。
そして多くの実家は、この間で時間が止まってしまいます。
思い出があるから決められない
相続不動産が難しい理由は、
単なる不動産ではないからです。
例えば投資用アパートなら数字で判断できます。
収益が出るか。
出ないか。
売るか。
持つか。
比較的シンプルです。
しかし実家は違います。
自分が育った家です。
家族で食事をした場所です。
父親が庭を手入れしていた。
母親が毎日掃除していた。
そんな記憶が残っています。
だから売却の話になると、
途端に気持ちの問題が出てきます。
実際にご相談いただく方も、
「売った方がいいのは分かるんです」
と言われます。
でも決断できない。
それは不動産の問題ではなく、
家族の思い出の問題だからです。
私はそれでいいと思っています。
無理に急ぐ必要はありません。
ただ、気持ちの整理がつかないまま何年も経ってしまうケースは少なくありません。
兄弟姉妹の意見がまとまらない
相続問題で本当に多いのがこれです。
兄弟姉妹で意見が違う。
実は珍しいことではありません。
長男は売りたい。
長女は残したい。
次男はどちらでもいい。
そんなケースもあります。
そして全員にそれぞれ理由があります。
静岡に住んでいる人。
県外に住んでいる人。
親の介護をしていた人。
そうでない人。
立場が違えば考え方も違います。
だから話がまとまらない。
その結果、
「とりあえずそのまま」
になります。
実は相続不動産の相談で一番多い答えかもしれません。
そして気付けば3年。
5年。
時には10年。
時間だけが過ぎていきます。
静岡でも増えている「実家をどうするか問題」

これは決して特別な話ではありません。
静岡市でも本当に増えています。
私が相談を受ける中でも、
相続そのものより、
相続後の実家をどうするか
で悩まれている方が多いように感じます。
子どもは県外、実家は静岡
今の時代、本当によくあります。
親御さんは静岡市。
お子さんは東京。
神奈川。
愛知。
あるいは関西。
就職や結婚で県外へ出るのは普通のことです。
すると相続後に問題になります。
実家へ戻る予定がない。
でも売却する決心もつかない。
管理するには遠い。
そんな状況です。
実際、
「年に2回しか行けません」
という方も珍しくありません。
それでも固定資産税は掛かります。
草も伸びます。
建物も少しずつ変化します。
だから実家をどうするか問題は、
今後さらに増えていくと思います。
空き家管理だけでは解決しないこともある
ここで誤解してほしくないのは、
空き家管理が悪いという話ではありません。
むしろ管理は大切です。
換気をする。
通水をする。
草を刈る。
建物の状態を確認する。
これだけでも家の傷み方は変わります。
実際にエステージでも空き家管理のご相談をいただくことがあります。
ただ、
空き家管理は建物を守るための方法であって、
実家をどうするかという問題の答えではありません。
売却するのか。
残すのか。
貸すのか。
将来誰か住むのか。
そこは別の話です。
だから私は、
管理をしながら考えればいいと思っています。
答えを急ぐ必要はありません。
ただ、考えることだけは後回しにしない方がいい。
それが相続不動産の相談を通じて感じていることです。
売却だけが答えではない

ここまで読むと、
「結局、売却した方がいいという話ですよね?」
と思われる方もいるかもしれません。
でも私はそうは思っていません。
実際の相談でも、
すべての相続不動産が売却になるわけではありません。
そのまま管理を続ける方もいます。
賃貸として活用する方もいます。
親族が住むことになるケースもあります。
大切なのは、
売るか残すかではなく、
自分たちで選んでいるかどうか
だと思うのです。
何となくそのままになっているのか。
考えた上で残しているのか。
同じように見えても大きな違いがあります。
管理を続けるという選択
実家を残すという判断も立派な選択です。
思い出がある。
将来使う可能性がある。
家族で話し合ってそう決めた。
それなら何も問題ありません。
ただ、その場合は管理も必要になります。
空き家は住んでいなくても変化します。
換気。
通水。
草刈り。
建物の点検。
定期的に見に行けるのであればそれが一番です。
もし難しければ、空き家管理サービスを利用する方法もあります。
静岡市でも遠方に住んでいる相続人の方から、
管理のご相談をいただくことがあります。
実家を残すなら、
残せる状態を維持することも大切です。
実家売却という選択
もちろん売却も一つの選択肢です。
ただ、
売却=手放す
ではなく、
次の方へ引き継ぐ
という考え方もあります。
実際、長年空き家だった住宅が、
リフォームされて再び家族の暮らす場所になることもあります。
子どもたちの声が聞こえるようになることもあります。
私はそういう場面を見ると、
家も喜んでいるんじゃないかなと思うことがあります。
誰も住まなくなった実家が、
もう一度誰かの生活の舞台になる。
それも不動産の一つの役割だと思います。
だから売却は決して寂しいことばかりではありません。
「いつか」は意外と早くやってくる

相続不動産の相談を受けていて思うことがあります。
それは、
5年前も同じことを考えていた
という方が本当に多いことです。
「落ち着いたら考えよう」
「時間ができたら整理しよう」
「来年には何とかしよう」
どれも間違いではありません。
ただ、一年は本当に早いです。
気付けばまたお盆。
気付けばまた年末。
そして実家は静かに時間を重ねていきます。
まずは現状を知ることから始める
売却を決める必要はありません。
結論を出す必要もありません。
でも一度だけ、
今の実家がどんな状態なのかを確認してみてください。
建物は傷んでいないか。
庭はどうなっているか。
固定資産税はいくらか。
売却したらどのくらいの価値があるのか。
そうしたことを知るだけでも状況は変わります。
実際、
査定をしたから売却するわけではありません。
相談したから売却しなければならないわけでもありません。
まずは知ること。
それが最初の一歩です。
相続不動産は一人で抱え込まなくていい
相続不動産の相談を受けていると、
皆さん責任感が強いです。
自分で何とかしなければ。
兄弟に迷惑を掛けたくない。
親の家だから大切にしたい。
そう考えています。
だからこそ悩みます。
でも、一人で抱え込む必要はありません。
相続のこと。
空き家のこと。
実家売却のこと。
管理のこと。
分からないことがあれば相談してください。
相談したから売却しなければならないわけではありません。
私自身、
「まだ何も決まっていません」
というご相談をたくさん受けています。
むしろ、その段階が一番多いかもしれません。
実家の問題は答えを出すことより、
誰かと一緒に整理することの方が大切な場合もあります。
まとめ:実家の時間は止まらない

このコラムを読んで、
「まるで自分のことみたいだな」
と思われた方もいるかもしれません。
実は、そういう方は少なくありません。
相続した実家。
親が施設へ入った後の家。
誰も住まなくなった空き家。
本当は気になっている。
何とかしなければと思っている。
でも毎日の生活に追われているうちに、気付けば何年も経っていた。
そんなご相談を私は何度も受けてきました。
だから私は、
5年経ったことを責める気持ちはまったくありません。
実家を放置したかったわけではない。
後回しにしたかったわけでもない。
ただ、人生には仕事もあります。
家庭もあります。
子育てもあります。
介護もあります。
実家のことだけを考えて生きているわけではありません。
だから時間が過ぎてしまうのは自然なことです。
ただ一つだけ言えることがあります。
それは、
実家の時間は止まっていない
ということです。
誰も住んでいなくても、
庭木は伸びます。
雑草も生えます。
建物も少しずつ変化します。
そして気付いた時には、
思っていた以上に時間が経っていることがあります。
だからといって、
今すぐ売却してくださいという話ではありません。
売るか残すか。
貸すか管理するか。
正解はご家族によって違います。
ただ、何も決めなくてもいいので、一度だけ実家のことを考える時間を作ってみてください。
家の状態を見てみる。
兄弟姉妹と話してみる。
査定だけ取ってみる。
空き家管理を検討してみる。
それだけでも十分です。
相続不動産の問題は、
答えを出すことよりも、
向き合うことの方が大切な場合があります。
そして、もし悩んでいるのであれば、一人で抱え込まないでください。
エステージには、
「まだ売るか決めていません」
「相続したけれど何から始めればいいか分かりません」
「親が施設に入ったので相談だけしたいです」
というご相談も数多く寄せられています。
お気軽にご相談ください。
売却ありきで考える必要はありません。
空き家管理という方法もあります。
そのまま保有するという選択もあります。
大切なのは、ご家族に合った答えを見つけることです。
『いつかやろう』
そう思っていた実家も、
今日少しだけ向き合ってみれば、もう「いつか」ではありません。
もしかしたら今日が、これから先の5年を変える一日になるかもしれません。

