不動産基礎知識
2025年04月03日

不動産の売買契約は解除できる?手続きや違約金、注意点を解説

不動産の売買契約が完了した後に、何らかの事情で契約を解除したいと考える方も多いものです。ひとことで契約解除といってもその種類はさまざまで、違約金がかかる可能性もあるため注意しなければなりません。この記事では、売買契約解除の種類を詳しく解説し、契約解除の流れや事例も併せてお伝えします。

そもそも不動産売買契約の解除とはなにか

不動産売買契約の解除とは、売買契約を結んだ後に、買主や売主の都合で契約をキャンセルすることです。契約した後も契約を解除できますが、原則として無条件では契約解除できません。解除にともなって、手付金を放棄したり、違約金を支払ったりする必要が生じる可能性が高いことには注意しましょう。

なお、売買契約が解除されると、双方が原状回復義務を負います。仮に建物が傾いていることを理由に契約解除する場合、売主は代金を、買主は建物を返還する義務を負うのです。契約期間の解消は契約締結時点に遡ることが基本であり、これを契約の解除の効果に関する「遡及効」といいます。

不動産売買契約を解除できる期限

契約の履行に着手するまでの間(買主が代金を支払うまでの間)であれば、手付金の放棄や倍返しにより売買契約をキャンセルできます。それ以降のキャンセルには、手付金の違約金が発生する可能性があるため注意しましょう。

不動産売却では、契約解除の期日を特約で設定することが多いです。契約から決済までの期間が3ヶ月以内の場合は、目安として契約から1ヶ月前後が契約解除の期日になります。

不動産売買契約解除にかかる費用と違約金の相場

契約解除にかかる費用と違約金の相場は次のとおりです。

<契約解除にかかる費用と違約金の相場>
・手付金…売買価格の10%前後
・違約金…売買価格の20%前後

違約金が発生しない場合、買主は手付金の放棄、売主は手付金の倍返しで契約解除できます。仮に売買価格が4,000万円の場合、手付金の目安は400万円、倍返しする場合の目安は800万円です。

違約金が発生する場合は、手付金とは別に売買価格の20%前後を支払います。ただし、双方の話し合いにより合意できた場合は、違約金なしで契約解除できる可能性もあります。また、契約解除の種類によっては、手付金や違約金を支払わずに契約解除できるケースもあるため、詳しくは次の項目でチェックしましょう。

不動産売買契約解除の種類

ひとことで契約解除といっても、その種類はさまざまです。買主側と売主側に分けて、不動産の売買契約を解除できるケースと、違約金の有無について解説します。

<不動産売買契約の種類>
・【買主側】買主が売買契約を解除できるケース
・【売主側】売主が売買契約を解除できるケース

【買主側】買主が売買契約を解除できるケース

買主の都合により売買契約を解除できる主なケースは次の6つです。それぞれの内容や違約金発生の有無を確認しましょう。

<【買主側】買主が売買契約を解除できるケース>
・手付金を放棄する解除
・契約不適合責任による解除
・売主の債務不履行による解除
・ローン特約による解除
・クーリングオフによる解除
・消費者契約法に基づく解除

手付金を放棄する解除

売買契約書に記載されている期日内であれば、支払った手付金を放棄することにより売買契約を解除できます。期日は契約内容によって異なるため、いつまでに申請が必要かといった要件を確認しておきましょう。

契約不適合責任による解除

契約不適合責任とは、引き渡された物件の種類や品質が、契約に適合しないことです。例えば契約とは異なる構造の建物が引き渡されたり、建物に瑕疵(欠陥や不具合)が見つかったりした場合に追求できます。契約不適合責任により契約を解除する場合、損害賠償請求が可能な場合もあります。

なお、契約不適合責任を追及できる期間は、民法により売買契約から1年以内と定められているため注意しましょう。

売主の債務不履行による解除

債務不履行とは、売主が約束を守らないという意味です。例えば契約した日付を過ぎても物件の引渡しが行われず、売主に催促しても債務が履行されない場合は、買主都合で契約解除したうえで違約金を受け取れます。

ローン特約による解除

売買契約書にローン特約を盛り込んでおり、住宅ローン審査に通らなかった場合は、ローン特約により売買契約を解除できます。この場合も違約金は発生しません。

クーリングオフによる解除

以下の条件を満たす場合は、買主都合により、違約金なしで一方的に売買契約を解除できます。

<クーリングオフを適用する条件>
・売主が宅建業者かつ買主が宅建業者以外
・売買契約を結んだ場所が喫茶店やレストランなど、不動産会社の事務所以外
・不動産会社から書面を交付された日から8日以内

消費者契約法に基づく解除

買主が宅建業者以外で、売主が宅建業者の場合は、消費者契約法に基づいて売買契約を解除できる場合があります。売主が事実と異なる情報を伝えたり、間違った情報を伝えたりしていた場合は、消費者契約法により違約金なしで契約解除が可能です。

【売主側】売主が売買契約を解除できるケース

売主側が売買契約を解除できるケースは次の5つです。違約金発生の有無も含めて内容を確認しておきましょう。

<【売主側】売主が売買契約を解除できるケース>
・手付金倍返しによる解除
・買主の支払い遅延による解除
・契約不適合責任による解除
・反社会的勢力廃除条項による解除
・引越し前の滅失・損傷による解除

手付金倍返しによる解除

売買契約書に記載されている期間内の場合は、手付金倍返しにより売買契約を解除できます。仮に買い主から受け取った手付金が400万円の場合、契約解除には800万円の支払いが必要です。

買主の支払い遅延による解除

期日までに買主が代金を支払わなかった場合は、債務不履行を理由に売買契約を解除できます。買主の責任が認められる場合、違約金の請求が可能です。

契約不適合責任による解除

買主から契約不適合責任を追及された場合、買主からの契約解除の申し出に応じなければならない可能性があるため注意しましょう。契約解除にあたっては、買主が支払った仲介手数料などの費用を損害賠償する責任も生じます。

反社会的勢力廃除条項による解除

売主または買主が暴力団などの反社会的勢力の場合、契約は強制解除されます。契約に関与した当事者は、違約金に加えて、売買代金の80%を目安とした制裁金の支払いも必要です。

引越し前の滅失・損傷による解除

買主が引越しをする前に、地震や台風などの天災や火災が原因で不動産が滅失・損傷した場合は、売買契約が白紙撤回となり、手付金を返還する必要が生じます。なお、損傷の範囲が軽微な場合は、売主の負担で修繕することにより、売買契約を継続することが可能です。

不動産売買契約を解除する流れ

不動産売買契約を解除する流れをステップごとにご紹介します。

① 不動産会社に連絡する
売買契約を解除したい場合は、不動産会社に連絡し、契約をキャンセルする旨を伝えましょう。

② 不動産会社が取引相手に連絡する
不動産会社の仲介を受けて手続きを進め、取引相手に対して文書で契約解除を通告します。この場合、配達証明付き内容証明郵便を利用することが一般的です。

③ 取引相手と条件交渉を行う
取引相手と違約金などの条件交渉を行い、合意に達した場合は、売買契約を解除できます。違約金の支払いや、手付金の返還が生じる場合は、期日までに支払いましょう。

不動産売買契約解除の事例

具体的な事例を用いて、不動産売買契約解除の方法をご紹介します。

<不動産売買契約解除の事例>
・事例①急な転勤で売買契約を解除したい
・事例②購入予定の物件に瑕疵が見つかった
・事例③住宅ローン審査に通らなかった
・事例④売主が契約の条件を変更してきた

事例①急な転勤で売買契約を解除したい

転勤はやむを得ない事情ではありますが、買主都合による契約解除となります。原則として手付金の放棄が必要なほか、解除する時期によっては違約金が発生するため注意しましょう。

事例②購入予定の物件に瑕疵が見つかった

物件に瑕疵が見つかった場合は、まず売主に対して契約不適合責任を追及します。修繕で解決できる場合は、売主に修繕費を負担してもらい、住み続けることが基本です。心理的瑕疵のように住み続けられない事情がある場合は、売買契約を解除し、売主に損害賠償請求を行います。

事例③住宅ローン審査に通らなかった

ローン特約を付帯している場合は、違約金なしで売買契約を解除でき、手付金も全額返金されます。ローン特約が付帯していない場合、住宅ローン審査に通らなくても、一括で売買代金を支払わなければなりません。支払いが不可能な場合は手付金の返還なしで契約を解除する必要があります。

事例④売主が契約の条件を変更してきた

売主が一方的に契約の条件を変更してきた場合、売主の要求が宅地建物取引業法に違反する可能性があります。この場合は売買契約を白紙撤回できるため、不動産会社に相談しましょう。

まとめ

不動産の売買契約を結んだ後も、契約を解除することは可能です。ただし、状況により手付金の放棄や倍返し、違約金の支払い義務が発生するため注意しましょう。なお、手付金の相場は売買価格の10%、違約金の相場は売買価格の20%が相場です。

「株式会社エステージ」は、静岡市周辺で不動産に関するスペシャリストです。不動産売却から買取、査定、空き家管理まで幅広く対応しております。売買契約の解除に関するご相談も、可能な限りお客様に寄り添った形で回答させていただきます。皆様のご相談をお待ちしております。