不動産コンサルティング
2026年01月16日

家族信託は誰に向いている?向いていない?不動産売買の現場から見る判断基準

「家族信託って、うちもやった方がいいんでしょうか?」
親が施設に入ったあと、こう聞かれることは少なくありません。実家の管理や将来の売却を考え始めたものの、本人に会えない、話が前に進まない、でも自分が勝手に決めていいのか分からない。そんな状態で時間だけが過ぎてしまうケースを、現場では何度も見てきました。

一方で、家族信託の話をすると「それって資産家がやる制度ですよね?」「正直、うちには大げさじゃないですか」と戸惑われることも多いです。確かに家族信託は便利な制度ですが、誰にでも当てはまる万能な方法ではありません。向いている人もいれば、無理に使わない方がいい人もいます。

問題は、自分がどちらなのかを知らないまま、判断できずに止まってしまうことです。不動産売買の現場で実際に起きているケースをもとに、家族信託が「合う人・合わない人」の違いを整理していきます。

家族信託は「誰でもやる制度」ではない

家族信託は非常に有用な制度ですが、決して「誰でもやる制度」ではありません。 その理由は、各人の家庭状況や目的、資産の種類によって向き不向きがあるためです。

まず、家族信託は高齢化社会へ対応するための制度として誕生しました。 主に認知症対策や資産の管理を柔軟に行うために利用されることが多いです。

しかし、制度を正しく活用するためには、それなりのリテラシーと準備が必要。 例えば、大きな不動産を所有する家庭では相続争いを避ける手段として適していますが、一方で資産が少ない場合や、複雑な家庭問題を抱えていると向いていない場合もあります。

よって、自分の状況にフィットするかどうか事前にしっかりと考慮する必要があります。 家族信託が誰に向いているのか、向いていないのかを見極めることが肝心です。

家族信託に向き・不向きがある理由

家族信託に向き・不向きがある理由は、制度の特性とその効果にあります。家族信託は資産管理や承継の柔軟性を高める一方、関係者の理解不足や費用面でのデメリットも考慮すべきです。

この制度は主に認知症などによる資産凍結を防ぐことを目的とし、資産管理をスムーズに行う手段として注目されています。 例えば、親が高齢で今後の判断力に不安がある場合、予め家族信託を設定しておくことで資産の管理や売却がスムーズに行えます。

しかし、家族内での信頼が欠如していると制度の趣旨を理解することが難しく、トラブルの原因になることも。 また、手続きを行う際には法律事務所や専門のコンサルタントに相談する必要があり、その過程で費用がかさむことも忘れてはなりません。

したがって、家族信託は家族の信頼関係や資産規模に応じて適用が検討されるべきです。 理解不足や費用が問題とならない家庭において特に有効です。

制度を使う前に整理すべき前提条件

家族信託を活用する前に、いくつかの前提条件を整理しておくことが重要です。明確な目的と参加者間の合意が制度の成功に不可欠です。

まず、家族信託を利用することで具体的に何を達成したいのか、目的を明確にすることが始めとなります。 例えば、親の資産を将来どう扱うか、共有不動産をどう管理するかといった具体的な方向性が必要です。

また、重要なのが契約に関与する全員の合意。この合意がなければ、後々トラブルの原因となる可能性があります。 例えば、子供たちがみな同意しているか、他の親族との意見の食い違いがないかは重要なポイントです。

さらには、信託を担う人(受託者)の選定も慎重に行うべきです。信頼できる人物を選ぶことで、家族信託が適切に機能します。

制度を活用するためには、このような前提条件をクリアする必要があります。それにより、家族信託はスムーズに運用可能です。

家族信託が向いている人の特徴

家族信託は、特に不動産の管理や資産保全を考える方にとって、賢い選択肢となります。 例えば、不動産を複数所有しているケースでは、家族信託が非常に有効です。

なぜそう言えるのか。不動産を複数所有していると、管理が煩雑になりがちです。 家族信託を利用することで、信託された不動産を一元的に管理することが可能になります。相続時のトラブルを回避できるのも、大きなメリットです。

また、将来の売却や資産整理を見据えている場合も、家族信託が向いています。「いざというとき、家族が困らないようにしたい」と考える方にとって、信託は有効な手段です。 信託契約を結べば、信頼できる家族が資産を管理し、最適なタイミングで不動産を売却することが可能です。

よって、家族信託は不動産を複数所有している方や、将来的な資産整理を考慮している方に特に適しています。

不動産を複数所有しているケース

不動産を複数所有している方には、家族信託が理想的です。なぜなら、所有する不動産が増えると、その管理はさらに複雑化するからです。

家族信託を活用すれば、各不動産を一元管理でき、所有者に変わらずに売買が可能です。例えば、地方の土地や都市部のマンションを手にしている場合、管理が分散し、煩雑になることは珍しくありません。 そこで信託を利用することで、信頼できる家族がそれぞれの不動産を適切に管理できます。

結果として、家族信託を用いることで、不動産の管理が容易になり、遺産相続の際の混乱を避けることができます。

将来の売却や資産整理を見据えている場合

将来的に不動産を売却したり、スムーズな資産整理を考えている方にとっても、家族信託は非常に効果的です。 なぜなら、信託は事前に決めたプランに基づいて不動産の管理、売却が可能になるからです。

具体的な例として、老後の生活資金確保や子供たちへの資産分配を考える時期に到達した場合、家族信託を設定しておくと便利です。 信託された不動産は信頼できる家族が管理し、将来の売却を視野に入れた決定ができます。

このため、「いつか不動産を売却したい」「資産を円滑に家族に渡したい」と考えている方でも、信託を通じてより安心できる資産管理が実現します。

家族信託が特に有効になる典型的な場面

「家族信託は誰に向いているの?」と疑問に思う人もいるでしょう。 実際に、家族信託が特に有効になる場面は、いくつかの具体的な状況に限られます。

特に、家族信託は施設入所や長期入院の可能性が出てきたとき、そして認知症のリスクを現実的に考え始めたタイミングで考慮すべき選択肢です。 これらの場面では、財産管理や不動産売買の手続きがスムーズに進められるメリットがあります。

それでは、そうした場面について詳しく見てみましょう。

施設入所・長期入院の可能性がある場合

施設入所や長期入院が考えられる場合、家族信託は非常に有効です。 なぜなら、本人が不動産を管理する余裕がなくなった際に信託を活用すれば、スムーズな不動産売買が可能だからです。

例えば、親が介護施設に入ることになり、持っている不動産を処分して費用を捻出したいとします。 この時、家族信託を利用しておけば、受託者が物件の売却を進められます。結果的に、家族は安心して最適な生活環境を整えることができます。

施設入所や長期入院の状況下では、家族信託は非常に頼りになります。 ですから、早めに準備しておくことがオススメです。

認知症リスクを現実的に考え始めたタイミング

認知症リスクが高まったら、家族信託を考える時期です。 認知症は、判断能力を失う可能性があるため、家族信託を使うことによって安心して財産を管理できるからです。

例えば、高齢の親御さんの認知機能が低下し始めた兆候があるとします。 この場合、事前に家族信託を設定しておくことで、親御さんの資産が安全に管理され、必要なときに必要な手続きが迅速に行われます。 「もし判断がつかなくなったらどうしよう?」という不安を解消することができるのです。

認知症のリスクを考え始めたときこそ、家族信託を導入するタイミング。 無駄な心配を減らすためにも、前もって準備を始めましょう。

家族信託が向いていない、または慎重に考えるべきケース

家族信託は有効な不動産管理手段として注目されていますが、万人にとって最適解とは限りません。

使いどころを誤ると、家族間の関係に悪影響を及ぼすこともあります。ここでは、特に家族信託が向いていない、もしくは慎重な検討が必要なケースを紹介します。

不動産が1つだけで売却予定がない場合

家族信託は不動産を多数所有し、リスク管理を効率化したい場合に活用されることが多いです。しかし、不動産がたった一つだけで売却予定もない場合には、あまり適していないかもしれません。

その理由は、家族信託を活用することによって得られるメリットとコストが釣り合わない可能性があるからです。不動産が複数であれば、その都度適切な信託設定が求められる場合もあり、信託の利点も大きいと言えます。

例えば、1つの家屋を親が管理しており、将来的に売却が考えられないようなケース。これでは、信託契約の設定や運用費等が負担になるばかり。必要性が薄いと言えるでしょう。

結局のところ、不動産が1つで売却予定がない場合には、長期的には家族信託が向いていないケースも多いと言えます。

家族関係が複雑・信頼関係が築けていない場合

家族信託には、通常、信頼できる家族を受託者に選ぶ必要があり、これが一番重要なポイントでもあります。しかし、家族関係が複雑であったり、信頼関係が築けていない場合、そもそも家族信託が成立しないことにもなりかねません。

理由としては、受託者には不動産の管理権限が与えられるため、信頼関係が必要不可欠だからです。受託者に権限を与えることで逆にトラブルを生む可能性が増えます。不動産の売買や賃貸の際に意見が衝突することも。

例えば、親族間で意見の対立が常に起きている場合や、家族に問題を抱えている場合には、信託を設定することでかえって火種になる可能性があります。このような状況下で信託を組んでも、その後の問題解決には繋がりにくいでしょう。

したがって、家族関係が複雑で信頼関係が築けていない状況では、家族信託を設定するには慎重な判断が必要とされます。

成年後見制度や他の方法が適しているケース

家族信託は多くのメリットを提供しますが、すべてのケースにおいて最適とは言えません。 それでは、家族信託ではなく、成年後見制度や他の方法が適している場合について考えてみましょう。

判断能力がすでに低下している場合や、家族信託を設計する時間的余裕がない場合が挙げられます。 不動産売買の現場でも、このような状況に直面することは少なくありません。 対応が急がれるとき、他の手段を選択する賢明な判断が必要です。

家族信託が向いていない場合に適した選択肢として、成年後見制度や委任状公正証書などの検討が求められます。

すでに判断能力が低下している場合

すでに判断能力が低下している場合には、家族信託ではなく成年後見制度の利用が適しています。 家族信託を組む際には本人の意思確認が必要で、そのためには判断能力の健全さが求められます。

たとえば、不動産を売却する際、認知症やその他の理由で意思決定が困難な場合は、成年後見制度が最適です。 この制度により、裁判所の監督の下、後見人が適切に資産を管理できます。 また、煩雑な手続きが不要であることから、手間をかけずにすぐに対応できる点がメリットです。

したがって、すでに判断能力が低下している人には、家族信託よりも成年後見制度が適している場合が多いでしょう。

家族信託を設計する時間的余裕がない場合

家族信託を設計するには、時間と計画が必要です。そのため、時間的余裕がない場合は、他の方法を検討するのが得策でしょう。 急な不動産の売買や相続の場面では特に重要な視点です。

具体的には、家族信託の設計には、信託契約の詳細な合意が不可欠です。これには専門家との相談が必要なことも多く、数か月かかる場合もあります。 一方で、後見制度や委任状による不動産売買の方が、より迅速に手続きを進めることが可能です。 特に、迫ったタイムスケジュールや金銭的な制約がある場合、この柔軟さが重要となります。

したがって、時間の制約がある場合には、家族信託を避けて他の方法を利用することが賢明な選択です。

不動産売買の現場から見た「判断の分かれ目」

家族信託は、不動産売買において非常に便利な制度とされています。しかし、全てのケースで利用が適切というわけではありません。そこで、現場から見える判断基準についてお話しします。

まず、事前に家族信託について相談している場合と、事後相談の場合で大きな違いが生じやすいです。どちらも目的は資産の適切な管理ですが、そのプロセスや結果は異なることが多いのです。

例えば、事前相談で家族信託を利用した場合、トラブルを未然に防げることが多いです。相続人同士の話し合いを通じて合意を取り付け、スムーズな手続きを可能にします。それに対して、事後相談は、既に問題が発生している状況が多く、解決まで時間がかかるのが一般的です。

従って、不動産売買に関しては、家族信託を考えている場合は事前相談が非常に重要だという結論に至ります。問題解決の鍵となることが多いのです。

事前に相談があったケースと、事後相談の違い

家族信託で問題を回避するには、事前に相談があったケースと事後相談の違いを理解することが大切です。どの段階で家族信託に関する相談をしたかによって、適用の可否や効果が大きく変わるからです。

事前相談の場合、家族全体で意見をすり合わせ、全員が納得する形で信託契約を結ぶことが可能です。不動産売買においても、事前に関与することで意識の統一が図れ、相続や後継者をめぐるトラブルを回避できます。

一方、事後相談の場合は、それが難しいことが多いです。例えば、当事者間で既に不協和音が生じた後では、家族信託でも解決が難しい状況に陥ることがあります。「もっと早く相談しておけば良かった」と後悔する人も少なくありません。

事前に家族信託について相談しておくことが、不動産売買を含む様々な手続きで、問題解決やトラブル回避につながる重要なステップであると言えるでしょう。

実際にトラブルになりやすい判断パターン

家族信託におけるトラブルは、不動産売買の現場でしばしば見られます。それは判断ミスや知識不足に起因することが多いです。

例えば、家族信託の内容を十分理解せずに契約を進めてしまう場合。特に、不動産を含む家族信託は複雑であるため、専門家の助言が欠かせません。また、親族間の信頼関係が不十分な場合、紛争に発展するリスクもあります。

「信託契約を結んだのに、なぜこんなことに?」と疑問を持つ方もいます。これは強い信頼を家族信託に置きすぎたか、または全貌が理解できていなかったかのどちらかです。パートナーシップや透明性を保つことが、トラブル回避の肝になります。

結果として、不動産売買の場面では、家族信託の活用が事前の意識的な検討とシステムの理解によって、トラブルの未然防止に役立つ重要な制度であることがわかります。

まとめ:家族信託は「合う人が使う」ことで真価を発揮する

結論から言うと、家族信託は「やった方がいい人」と「無理にやらなくていい人」がはっきり分かれる制度です。当社として数多くの不動産売却相談を受けてきた中で感じるのは、不動産を複数所有している方や、将来的に売却や資産整理が避けられない方には、家

族信託が有効に機能する場面が多いという点です。

一方で、不動産が一つだけで売却予定もなく、家族間の信頼関係が十分でない場合は、かえって負担になるケースもあります。制度の良し悪しではなく、「今の状況」と「これから起こり得ること」を基準に判断することが重要です。現場では、判断を先送りした結

果、選択肢が狭まってしまった例も少なくありません。まずは自分の不動産が将来どうなる可能性があるのか、一度整理することから始めてください。