不動産基礎知識
2025年04月29日

住宅ローン返済中に退職するリスクと対策|金融機関に失業がバレる可能性も解説

住宅ローンの返済期間は30年以上になるケースが多く、その間に転職や退職を経験する方も多いです。そこで気になるのは、返済期間中の退職に伴う住宅ローンへの影響ではないでしょうか。今回は、住宅ローン返済期間中に退職するリスクと対処法や、その後の資金計画のポイントなどを解説します。

住宅ローン返済中の退職による影響とは

住宅ローン返済中に転職をしたり、定年退職をしたり、何らかの理由で失業したりする可能性は誰にでもあります。まずは退職が住宅ローンに何らかの影響を与えるのかどうかを確認しましょう。

<住宅ローン返済中の退職による影響>
・住宅ローン返済中に退職しても問題ないケース
・退職により住宅ローンに影響が出るケース

住宅ローン返済中に退職しても問題ないケース

退職後も住宅ローンの返済を続けられる場合は、住宅ローン返済中に退職しても問題ないです。住宅ローン契約時に所属していた会社を退職したとしても、それを理由に住宅ローンの契約を破棄されたり、一括返済を求められたりすることはありません。

退職により住宅ローンに影響が出るケース

退職が原因で住宅ローンに影響が出るケースは、主に以下の2つです。

<退職により住宅ローンに影響が出るケース>
・収入源により住宅ローンの支払いが遅延するケース
・融資実行前に退職するケース

原則として、退職を理由に住宅ローンの支払いが免除されることはありません。そのため、収入源により住宅ローンの支払いが遅延すると、金融機関は抵当権を行使して、自宅を差し押さえる可能性があります。

また、住宅ローンの融資実行前に退職すると、契約そのものが取り消しになる可能性が高いです。融資が実行されるまでの間に退職することは、できる限り避けましょう。

住宅ローン返済中に退職する場合のリスクと対処法

住宅ローン返済中に退職するリスクは次の3つです。それぞれの対処法も併せて解説します。

<住宅ローン返済中に退職する場合のリスク>
・住宅ローンの返済が困難になる
・金融機関に報告しなければ契約違反となる可能性がある
・住宅ローンの借り換えがしにくくなる

住宅ローンの返済が困難になる

退職により失業したり、転職により収入が減少したりすると、住宅ローンの返済が困難になるリスクがあります。返済が滞ると督促が行われ、それでも支払いができなければ契約違反となり、借入額を一括返済しなければなりません。これに応じなかった場合は、住宅が差し押さえられ、競売にかけられます。

競売にかけられた場合、売却額は市場価格の70%程度にしかなりません。そのため、競売にかけられる前に金融機関に相談して、市場価格に近い金額で売却できる「任意売却」の許可を得ましょう。

金融機関に報告しなければ契約違反となる可能性がある

契約書に「勤務先が変更になった場合は通知すること」といった条項が含まれている場合は、退職したことを金融機関に報告する必要があります。報告を怠ると、契約違反とみなされる可能性もあるため、速やかに報告しましょう。

住宅ローンの借り換えがしにくくなる

住宅ローンの返済額を減らす手段として、より金利が安いローン商品に借り換える方法が有効です。ただし、借り換えの際には融資に向けた審査が行われます。そのため、退職して無職になったり、転職して収入が大幅に減ったりすると、審査に落ちてしまう可能性が高いです。

住宅ローンの借り換えを検討している場合は、退職や転職の前に実行しましょう。

定年退職時に住宅ローン残債がある場合の対処法

定年退職時に住宅ローンが残っている場合、以下の対処法が有効です。それぞれのメリットをご紹介します。

<定年退職時に住宅ローン残債がある場合の対処法>
・退職金を使って返済する
・一部繰り上げ返済を行う
・リースバックやリバースモーゲージを検討する

退職金を使って返済する

退職金を使って住宅ローンを完済すると、月々の支出を大幅に削減できます。貯金は減ってしまいますが、支出を削減できるぶん、老後の生活にゆとりを持たせやすいことはメリットです。

一部繰り上げ返済を行う

一部繰り上げ返済とは、住宅ローンの一部をまとめて支払うことです。一部繰り上げ返済を行うと、住宅ローン残債の元本が減り、そのぶんの利息をカットできます。また、月々の返済額を減らしたり、返済期間を短縮できたりすることもメリットです。

リースバックやリバースモーゲージを検討する

定年退職後の資金に余裕がない場合は、リースバックやリバースモーゲージを検討しましょう。

<リースバックとリバースモーゲージの特徴>
・リースバック…自宅を売却したうえで、賃貸借契約を結び直して自宅に住み続けられる
・リバースモーゲージ…自宅を担保にしてお金を借り、亡くなるまでは利息だけを支払って住み続けられる

いずれも引っ越しの必要がなく、住み慣れた家から離れずに済みます。

住宅ローン返済中に失業するとどうなるのか

住宅ローン返済中に、会社の倒産などで失業する可能性もあります。その場合、住宅ローンにはどのような影響が及ぶのかを確認しておきましょう。

<住宅ローン返済中に失業するとどうなるのか>
・失業は金融機関にバレる可能性がある
・金融機関に相談すると救済措置を受けられる場合がある
・住宅ローンの返済が難しい場合は早めの売却が必要

失業は金融機関にバレる可能性がある

失業後に新しくローンを申し込んだり、給与振込口座にしていたりする場合は、失業が金融機関にバレる可能性があります。住宅ローンの契約約款に勤務先変更の報告義務がある場合、失業した旨を金融機関に報告しなければ、契約違反とみなされるケースがあるため注意しましょう。

金融機関に相談すると救済措置を受けられる場合がある

失業したことを金融機関に報告すると、返済期間の延長や、月々の返済額の軽減、一時的な返済猶予といった救済措置を受けられる場合があります。これまでと同じように返済を続けることが難しくなった場合は、まず金融機関に相談しましょう。

住宅ローンの返済が難しい場合は早めの売却が必要

救済措置を受けても住宅ローンの返済が難しくなった場合は、早めの任意売却が必要になります。任意売却の期限は、競売の開札日の前日です。それ以降は任意売却を行えず、自宅が競売にかけられるため、早めに金融機関や不動産会社に相談しましょう。

退職後の住宅ローンに関する資金計画のポイント

退職後も無理なく住宅ローンの支払いを続けるために、綿密な資金計画を立てることが大切です。資金計画のポイントを3つご紹介します。

<退職後の住宅ローンに関する資金計画のポイント>
・退職金の金額と活用方法をシミュレーションする
・定年退職後の生活費と住宅ローンのバランスを考える
・退職後は確定申告が必要な場合がある

退職金の金額と活用方法をシミュレーションする

退職金を受け取れる場合は、その金額と活用方法をシミュレーションしましょう。退職金の全額または大半を使って住宅ローンを完済すると、突発的な出費に対応できなくなります。老後は高額な医療費などが発生する確率も高まるため、預貯金を使い果たさないように注意しましょう。

定年退職後の生活費と住宅ローンのバランスを考える

夫婦のみの無職世帯は、老後の生活で2,000万円が不足するという「老後2,000万円問題」が話題になりました。

定年退職後も住宅ローンの支払いが続く場合は、年金など今後の収入で生活費を賄えるか確認しましょう。住宅ローンの支払いが難しい場合は、滞納する前の売却や、リースバック・リバースモーゲージの活用がおすすめです。

退職後は確定申告が必要な場合がある

退職した年に再就職しなかった場合は、自分で所得税の計算を行い、確定申告を済ませる必要があります。確定申告をしなかった場合、住宅ローン減税の利用を継続できなくなるため、再就職しないまま年を越した場合は、必ず確定申告を行いましょう。

まとめ

住宅ローン返済中に退職すると、その後の返済が難しくなるおそれがあります。また、契約内容によっては、金融機関に退職・転職した事実を伝える義務が生じることも注意点です。

繰り上げ返済や任意売却、救済措置の活用、リースバック・リバースモーゲージなど対処法は多いため、退職に伴い住宅ローンの返済に悩んだ場合は、不動産会社や金融機関に相談しましょう。

「株式会社エステージ」は、静岡市(葵区・駿河区・清水区)周辺で不動産に関するスペシャリストです。不動産売却から買取、査定、空き家管理まで幅広く対応しており、今回のような住宅ローン支払い中の退職に関するご不安事もアドバイスいたします。皆様のご相談をお待ちしております。