連帯保証人と保証人の違いとは?契約を解除できるケースも解説
連帯保証人と保証人は、どちらも債権者の返済が滞った際に返済義務を負う人物です。しかし、連帯保証人と保証人には3つの違いがあるので、保証人の依頼を受けた方は、返事をする前に両者の違いを把握しておきましょう。
今回は、連帯保証人と保証人の違いを解説します。記事内では保証人契約を解除できるケースや、連帯保証人と保証人に関する疑問も徹底解説しているので、ぜひ参考にしてください。
連帯保証人と保証人の違い
連帯保証人と保証人には、以下の3点で違いがあります。
●連帯保証人と保証人の違い
〇 催告の抗弁権
〇 検索の抗弁権
〇分別の利益
1つずつ内容を解説していきましょう。
催告の抗弁権
催告の抗弁権は、保証人のみに認められている権利です。保証人は、債権者から支払い請求が来ても、債務者に支払わせるよう強く主張できます。
連帯保証人には催告の抗弁権がないので、債務者から連絡が来た場合は、債務者の代わりに支払わなければなりません。
検索の抗弁権
検索の抗弁権も、保証人のみに認められている権利です。保証人は、債権者から財産の差し押さえを命じられた場合、自分より先に債務者の財産をすべて差し押さえるよう主張できます。
連帯保証人には検索の抗弁権がないので、債権者から財産の差し押さえを命じられると、そのまますべての財産を差し押さえられてしまいます。
分別の利益
分別の利益も、保証人のみに認められている権利です。保証人は複数いる場合、各保証人は請求額を等分した金額のみを支払うだけで義務を全うできます。
例)600万円の負債に対し、3人の保証人がいる場合
〇 Aの返済額:200万円
〇 Bの返済額:200万円
〇 Cの返済額:200万円
ただし、連帯保証人には分別の利益が認められていないため、連帯保証人が複数人いたとしても、全員が請求額を全額支払わなければなりません。
例)600万円の負債に対し、3人の連帯保証人がいる場合
〇 Aの返済額:600万円
〇 Bの返済額:600万円
〇 Cの返済額:600万円
ただし、複数人のうちの誰かが負債を満額返済した場合、そのほかの連帯保証人の返済義務はなくなります。
求償権は両者に認められている
求償権は、連帯保証人と保証人のどちらにも認められている権利です。求償権は、債務者の代わりに支払った金額を債務者に請求できる権利なので、負債を肩代わりしたあとに求償権を行使したい場合は、弁護士に相談してみましょう。
2020年の民法改正で変わった保証人制度
連帯保証人は保証人より責任が重すぎるので、連帯保証人にも極度額が適用されるよう2020年に民法が改正されました。
極度額とは、保証人が肩代わりする最大金額のことです。
これにより、連帯保証人にも契約書へ極度額を記載する義務が生まれたため、債務者の負債を全額肩代わりする必要はなくなりました。
連帯保証人や保証人が必要なケースとは?
連帯保証人や保証人は、以下のようなケースで必要です。
●連帯保証人や保証人が必要なケース
〇 賃貸物件を契約する場合
〇 JASSOなどで奨学金を利用する場合
〇 ペアローンや収入合算で住宅ローンを申し込む場合
〇 親名義の土地に家を建てる場合
〇 借入審査にひっかかった場合
連帯保証人や保証人の契約を解除できるケース
連帯保証人や保証人の契約を結んだ場合、原則契約は解除できません。ただし、以下の2パターンの場合のみ、契約を解除できます。
●連帯保証人や保証人の契約を解除できるケース
〇 契約に同意していない場合
〇 債権者に契約解除の同意を得た場合
1つずつ解説していきましょう。
契約に同意していない場合
騙されて契約を結んでしまった場合や、知らない間に契約を結ばれていた場合など、連帯保証人や保証人になることを合意しないまま契約が結ばれていた場合は、契約を解除できます。
「契約は合意のもと成立する」と民法第522条1項に記載されているので、合意のない契約は、そもそも無効です。
ただし、契約に合意していない旨を証明するためには、裁判を起こさなければならない場合もあります。当人同士で話を進めるとトラブルに発展しやすいので、この場合は弁護士に相談しましょう。
債権者に契約解除の同意を得た場合
債権者に連帯保証人や保証人の契約解除の同意を得た場合も、契約を解除できます。
ただし、債権者にとって連帯保証人や保証人がいない状態は不利なので、基本的に契約解除の合意を得るのは難しいです。そのため、債権者に契約解除の同意を得たい場合は、代わりの保証人を用意し、弁護士に手続きを相談してみましょう。
連帯保証人と保証人に関するQ&A
最後に、連帯保証人と保証人に関する質問へ、まとめて回答します。連帯保証人と保証人についてさらに知識を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
Q:連帯保証人と保証人が死亡するとどうなる?
A:法定相続人に相続されます。
連帯保証人や保証人が死亡すると、故人の子ども、故人の両親や祖父母、故人の兄弟姉妹の順番で保証人の地位が相続されます。ただし、法定相続人が複数いる場合は、返済義務が相続人の人数で等分されるため、1人あたりの返済額は低くなります。
保証人の地位を引き継ぎたくない場合は、相続を放棄しましょう。相続を放棄すると、プラスの遺産と共に連帯保証人など負の遺産も継承されません。
Q:離婚すると保証人制度は無効になる?
A:離婚をしても保証人制度は有効です。
夫婦のどちらかが連帯保証人や保証人になっている場合、離婚をしても保証人の地位はそのまま引き継がれます。
ただし、債権者の同意があれば連帯保証人や保証人の制度を解除可能です。離婚後に保証人制度も解消したい場合は、代わりに保証人になってくれる人物を探し、弁護士を挟んで債権者と話し合いをしてみましょう。
Q:連帯保証人と保証人も返済できない場合は?
A:債権者に分割払いが可能か相談してみましょう。
連帯保証人や保証人は、債務者の支払いが滞った場合、基本的に一括で負債を債権者に返済しなくてはなりません。ただし、連帯保証人や保証人も一括で返済できない場合や、債権者が分割払いに応じてくれない場合は、債務整理を検討する必要があります。
債務整理とは?
債務整理とは、借金の返済免除や減額によって、借金問題を解決する手段です。債務整理には、以下3つの種類があります。
●債務債務整理の種類
〇 個人再生
〇 任意整理
〇 自己破産
個人再生とは、支払い能力がない旨を裁判所に認めてもらい、差し押さえを逃れつつ、借金の元本を約80%減額できる手続きです。 減額された借金は、3年~5年で返済していきます。ただし、個人再生はブラックリストに載ってしまう点がデメリットです。
任意整理とは、借入先の金融機関と話し合い、利息をカットして最長5年以内に借金を返済する手続きです。裁判所を通さず毎月の返済額を減額できるうえ、ブラックリストにも載らない点が大きなメリットといえます。ただし、任意整理でカットできるものは利息のみなので、個人再生ほど借金を減額できない点はデメリットです。
自己破産とは、支払い能力がない旨を裁判所に認めてもらい、借金の支払い義務を免除してもらう手続きです。ただし、自己破産は「ブラックリストに載る」「一定の財産は処分される」「手続き中は一定の職業に就業できない」など、個人再生や任意整理よりデメリットが大きい点に注意をしましょう。
まとめ
連帯保証人と保証人は、認められている権利に違いがあります。責任は連帯保証人のほうが重たいので、連帯保証人になってほしいとお願いされた場合は注意をしましょう。
契約に同意していない場合や、債権者に契約解除の同意を得られた場合は契約を解除できます。ただし、一度でも連帯保証人や保証人になってしまうと基本的に契約は解除できないので、その点にも注意し、保証人になるかならないか判断しましょう。
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