不動産コンサルティング
2026年03月24日

津波避難範囲の見直しから考える「現実的な防災」と不動産の関係

静岡県内で「津波避難範囲の見直し」が進んでいます。

ニュースだけ見ると、防災の話に思えるかもしれません。
ただ、現場の感覚としては少し違います。

これ、不動産の見方が変わる話です。

これまで多くの方が
「ハザードマップに入っている=危険」
「入っていない=安全」
こういった分かりやすい基準で判断してきました。

実際、物件のご案内でも
「ここハザードに入ってますよね?」
「ここは大丈夫ですよね?」
という会話は本当によくあります。

ただ今回の見直しは、そうした前提を少し崩す内容です。

これまで津波警報が出た場合でも、最大クラス(L2)を想定して広い範囲で避難指示が出されていました。
その結果、数万人単位の避難が発生し、鉄道が止まり、日常生活にも大きな影響が出ました。

「安全のためだから仕方ない」
そう思う一方で、

本当にそこまでの範囲が必要だったのか?

という疑問も現場では出ていたのが正直なところです。

今回の見直しでは、津波の高さに応じて避難範囲を変えるという考え方に変わりました。
つまり、最大リスクではなく、現実的なリスクに応じた対応です。

ここで重要なのは

同じ場所でも、基準によって“危険にも安全にも見える”ということ

です。

これは防災だけの話ではありません。

不動産においても
リスクの捉え方次第で評価が変わる時代に入ってきています。

「なんとなく安心そう」
「なんとなく危なそう」

こういった感覚だけで判断すると、
 良い物件を逃したり、逆に見落としが出たりする可能性があります。

この記事では、今回の見直しの内容を分かりやすく整理しながら、
不動産の現場ではどう考えるべきか
リスクとどう向き合うべきか

このあたりを、実務の視点からお伝えしていきます。

静岡県内で始まった「避難範囲の見直し」という動き

最近、静岡新聞でも取り上げられていましたが、静岡県内の自治体で「津波避難範囲の見直し」が進んでいます。

一言でいうと、
“広く避難させすぎていた現状を見直す動き”です。

これまでは、津波警報が出ると「最大クラスの被害(L2)」を前提に、かなり広い範囲で避難指示が出されていました。
安全側に寄せた判断としては当然とも言えます。

ただ、その結果どうなったか。

実際の事例では、約9万人が避難対象となり、鉄道が止まり、社会活動にも大きな影響が出ました。

ここで初めて見えてきたのが
“安全すぎるがゆえの現実的ではない防災”という課題です。

今回の見直しのポイントは「津波の高さで分ける」こと

今回の見直しは非常にシンプルです。

津波の規模に応じて、避難範囲を変える

これまで

  • 津波警報でも
  • 大津波警報でも

同じ「最大想定(L2)」で避難していた

これを見直して

  • 大津波警報(3m以上) → L2(最大想定)
  • 津波警報(1〜3m) → L1(現実的な浸水想定)

と段階的に分けるようになりました。

その結果、静岡市では
 約9万人 → 約5千人まで避難対象が減少

この数字だけでも、影響の大きさが分かります。

「安全」と「現実」のバランスという問題

ここが今回のニュースの本質です。

東日本大震災以降、日本の防災は間違いなく
「安全最優先」
に振れてきました。

これは必要なことです。

ただ一方で、現場ではこういう声もあります。

  • 毎回大規模避難になると生活が止まる
  • 過剰な避難で疲弊する
  • 結果として「またか」と軽視されるリスク

つまり

安全に寄せすぎることで、逆に機能しなくなる可能性

これが今回の見直しの背景にあります。

なぜ自治体によって判断が分かれるのか

今回の見直し、実は全ての自治体が賛成しているわけではありません。

むしろ、慎重な自治体も多いです。

理由はシンプルで

  • 「分けると分かりづらい」
  • 「避難しなくていいと誤解される」
  • 「結局迷って逃げ遅れる可能性」

つまり

“分かりやすさ”と“精度”のトレードオフ

これは非常に難しい問題です。

実際、防災においては
 「シンプルであること」=命を守る
という側面もあります。

だからこそ

 正解は一つではない
地域ごとの判断になる

という状況になっています。

不動産の現場でよくある「ハザードの誤解」

ここからは、少し不動産の話です。

お客様と接していると、かなりの確率でこういう認識があります。

  • ハザードマップに入っている=危険
  • 入っていない=安全

これは、正直かなり極端です。

今回のニュースが示しているのは

リスクには“段階”があるということ

  • L2(最大クラス)
  • L1(現実的な頻度)

この2つは、意味がまったく違います。

実務として感じる「ズレ」

現場で本当によくあるのが、このズレです。

物件をご案内していると、かなりの確率でこう聞かれます。

「ここハザードに入ってますよね?やっぱりやめた方がいいですか?」

正直、この判断だけで見送ってしまうのは
ちょっと“もったいない”と感じることも多いです。

逆に
「ここハザード外ですよね?安心ですよね?」

どちらもよくある質問です。

ただ、ここに大きな落とし穴があります。

例えば、ハザードに入っているからといって一律に「危険」と判断してしまうケース。
よく確認すると、その多くはL2、つまり最大クラスの想定だけが該当していることがあります。

一方で、ハザード外だから安心だと思って購入を検討される方もいますが、
実際には周辺環境や地形によってリスクがゼロとは言い切れないケースもあります。

つまり

“ハザードに入っているかどうか”だけで判断してしまうこと自体がリスクになる

ということです。

L2はあくまで「数百年に一度レベルの最大想定」です。
もちろん無視していいものではありません。

ただ、日常的に考えるべきは
現実的に起こりうるリスク(L1)

この2つを分けて考えないと、

  • 本来選べたはずの物件を見送ってしまう
  • 逆に安心だと思い込んでしまう

こういった判断ミスにつながります。

実際、この判断で迷っている方はかなり多いです。

だからこそ現場では
 「どのレベルのリスクをどう考えるか」
ここを一緒に整理することが重要だと感じています。

今回の見直しが不動産に与える影響

今回の動きによって、今後こんな変化が考えられます。

①避難区域=リスクという認識の変化

避難対象区域が縮小されることで
「危険エリアの見え方」が変わる可能性があります。

②売却時の説明の難易度が上がる

  • L1では対象外
  • でもL2では対象

この説明が必要になる

これは営業としては、かなり重要なポイントです。

③「安心」という言葉がより曖昧になる

今まで以上に

 「完全に安全な場所はない」

という前提で話す必要があります。

わたしの結論

今回の見直しについては、正直なところ
現場としてはかなり納得感があります。

というのも、これまでのように
「とにかく最大想定で広く避難する」というやり方だと、実際には社会が止まってしまうからです。

電車が止まる、仕事が止まる、生活が止まる。
そこまでの影響が出る中で、毎回同じ対応が本当に現実的なのかという疑問は、少なからずあったと思います。

だからこそ今回のように
“実際に機能する範囲で考える”という方向性は妥当だと感じています。

ただ一方で、怖いのはここからです。

今回の見直しを
 「範囲が狭くなった=安心」
と受け取られてしまうと、それは一気に危険になります。

これは不動産でもまったく同じで

  • ハザードに入っていないから安心
  • 表示がないから大丈夫

こういった判断で後悔されるケースは、実際にあります。

だからこそ大事なのは

分かりやすさよりも、“どう理解するか”

だと思っています。

防災も不動産も

  • 正確な情報を知ること
  • その意味を理解すること
  • 自分の基準で判断すること

この3つが揃って初めて、正しい選択ができるようになります。

結局のところ

「どう書かれているか」ではなく、「どう受け取るか」

ここが一番重要だと感じています。

まとめ|これからは「理解して選ぶ時代」

今回のニュースを見て感じるのは、
「なんとなく安心」という考え方が通用しなくなってきている、ということです。

これまでは
「ハザードに入っているから危ない」
「入っていないから安心」

そんなシンプルな判断でも、ある程度は通用してきました。

ただ、今回のように
避難範囲自体が見直されるようになると、その前提は崩れます。

同じエリアでも
見る基準によって“危険にも安全にも見える”

そんな時代に入ってきています。

だからこそこれからは

  • 最大リスクはどこまでか
  • 現実的に起こりうるのはどのレベルか
  • 自分は何を優先するのか

ここを理解した上で判断することが重要になります。

これは不動産もまったく同じです。

「なんとなく安心そうだから」ではなく
理解して選ぶ人と、なんとなく選ぶ人で結果が分かれる

あとで「しょんない」とならないように、最初の判断が大事です。

正直、ここは大きな差になります。

売却でも購入でも
後から「そんなはずじゃなかった」とならないために

“知らなかった”ではなく、“分かって選んだ”状態にしておくこと

これがこれからの不動産の考え方だと思います。