不動産コンサルティング
2025年12月22日

家族信託をしていなかったことで起きた不動産トラブル|現場の実例から学ぶ

「家族信託について詳しい情報が欲しい」、「家族信託に相談に来るのはどんなタイミングなんだろう?」

そんな疑問をお持ちの方に向けて、この記事では家族信託が必要とされる状況について探ります。 数ある信託の活用法でも、家族信託は元気なうちはその必要性を感じにくいことが多いものです。 その結果、問題が発生してから相談に来るケースが多く見られます。

なぜ家族が困難を抱えて相談に来るのか、事前に手を打っていればどうなっていたのか、考えてみたことはありますか? この記事では、実際の失敗事例をもとに、家族信託の役割やその重要性について解説します。 最後まで読むことで、家族信託への理解が深まり、未来への備えができるようになるでしょう。

なぜ「問題が起きてから」相談に来るケースが多いのか

「家族信託をしていなかったことで起きた不動産トラブル」は、多くの人にとって現実の問題です。こうしたケースが多い理由を考えてみましょう。

多くの人は、家族信託の重要性を日常生活の中で実感しません。特に問題が発生する前は、信託の必要性をあまり考慮しないことが多いのです。 その結果、問題が発生してから相談に来ることが多くなります。

家族の中で不動産の管理が思うようにいかなくなったり、急な判断を迫られる事態が起こると、初めてその重要性に気づくことが多いです。突然の入院や認知症の発症によって、不動産の管理や実行が難しくなるケースが非常に多いのです。

問題が起きてから対処するのでは遅すぎる、ということに気付くのは、まさにこうしたケースから学ぶことができる教訓なのです。

元気なうちは必要性を感じにくい家族信託

元気なうちは、多くの人が家族信託を必要と感じないことが一般的です。それが、不動産トラブルにつながる原因になっています。

確かに、現在健康で物事を合理的に判断できる状態にあると、家族信託や資産管理について真剣に考える動機が薄い場合もあるでしょう。日々の生活で家族信託のことを考える余裕はあまりないかもしれません。

例えば、元気な祖父が「まだまだ大丈夫。家族に迷惑をかけることはないだろう」と考えていたとします。しかし、何らかの理由で突然判断能力が低下した場合、不動産の契約や手続きが滞ってしまいトラブルに発展することがあります。

ですから、家族信託の必要性は元気なうちにしっかり感じ取って準備することが重要なのです。

施設入所・認知症発症後に気づく現実

家族信託をしていない場合、施設入所や認知症発症後に家族が直面する問題は深刻です。この現実に気付くのは、実際にトラブルが発生してからであることが多いのです。

認知症を発症すると、本人の意思すら不明確になります。この状態で不動産の売却や契約更新といった大きな手続きをスムーズに行うことは困難です。ここで初めて、家族信託の持つ法的効力の重要さに気付きます。

施設入所をきっかけに、財産の整理を行う必要性が生じることもよくあります。もし家族信託を事前にしていれば、管理の意思が明確でスムーズに進行します。 「問題はない」と思っていた日常が一転、さまざまな面倒事が一気に降りかかってくるのです。

現実に遅れることなく家族信託を行えば、問題を未然に防ぐことができます。家族信託の準備は強調したいポイントです。

家族信託をしていなかったことで売却が止まった実例

家族信託をしていなかったために、不動産売却が進まない事態が発生することがあります。 この結論に至る背景には、不動産の所有者が意思決定を行えなくなる状況が関係しています。

例えば、所有者が高齢者である場合、物理的には資産を売却することが可能でも、意思決定能力の低下が進行することがあります。 「資産を売るべきか?」と問われても、判断が迷宮入りするのは不本意です。

そこで家族信託の必要性が増すのです。家族信託によって未来の不安を防ぎ、スムーズに手続きを進めることができます。 家族信託をしていないと、こうした売却の進行上の問題を避けられません。

施設入所後に売却を検討したが進まなかったケース

施設入所後に不動産の売却を考えても、計画通り進めることが難しいケースがあります。 家族信託をしていないために、所有権の移動が滞ってしまうことがあるのです。

ある高齢者の方が、介護施設への入所をきっかけに自宅を売却することを決めました。しかし、あらかじめ家族信託契約を結んでいなかったため、法的な手続きが複雑化してしまったのです。 不動産登記の名義を変更するのにも長い時間がかかる場合があります。問題は売却の必要とタイミングが一致しなかったことです。

施設への入所時に売却をスムーズに進めるには、事前に家族信託の仕組みを作っておくことが不可欠です。 家族信託で計画的に所有権を移転しておけば、迅速な不動産売却が現実のものとなります。

認知症発症後に売却判断ができなくなったケース

認知症の発症によって、不動産売却の判断ができなくなるケースも考えられます。 家族信託をあらかじめ設定しておくことで、こうしたリスクを軽減できるのです。

認知症を発症した方の不動産売却が止まってしまった事例があります。 この方は、早期に売却することで得られる資金を医療費や介護費用に充当する予定でした。しかし、判断能力の低下が進んだため、売却手続きに支障をきたしたのです。 「どうしたらいいのか?」と周囲が問い詰められることも増えていきます。

家族信託があれば、そのような時でもスムーズに売却が進みます。

家族信託の設定を見送り、結果的に売却が進まなかったケースを防ぐため、事前の準備が重要となります。 認知症の進行が予想される場合は、事前に家族で充分話し合いを重ね、最適な選択をしておくことが肝要です。

成年後見制度を使うことになった実例

家族信託をせずに不動産を所有していた場合、思わぬトラブルに直面することがあります。その一例として、成年後見制度を利用せざるを得なくなったケースがあります。

家族が不動産の所有者の意思能力に疑念を持った時、成年後見制度を利用するのが一般的です。しかし、これには時間と費用がかかるため、事前の対策として家族信託を考慮すべきです。

実際に、多くの家族がこの制度に頼らざるを得なくなっています。一例として、ある家庭では高齢の親が認知症を発症し、意思決定が困難になったことで、不動産の管理が滞る事態に陥りました。成年後見を申請するまでの期間、売却や賃貸、新たな契約が全て凍結され、家族は多くの不便を強いられたのです。

よって、家族信託をしていなかったために起(引)き起こる不動産トラブルを防ぐには、成年後見制度に頼らざるを得ない状況を避ける手段として、事前対策が必要です。

後見申立てにかかった時間と費用

成年後見制度を利用すると、多くの時間と費用がかかります。この事実を免れられる人は少ないです。

申立て手続きには通常数ヶ月がかかります。さらに、裁判所の審判が終わるまでの間は、不動産の管理や売却ができない状態が続きます。この間に不動産価値が下落すると、その損失は計り知れません。さらに、法定代理人や弁護士報酬、裁判所手数料などの費用がかかることも覚悟しなければなりません

例えば、あるケースでは、200万円以上の費用がかかったと言われています。そして、申立てから実際に成年後見人が選任されるまでの間に、半年以上もの時間を要しました。この間、家族は適切な不動産管理が行えず、収益機会を逃すこととなりました。

このように、成年後見制度には膨大な時間と費用がかかるため、事前に家族信託を検討することが賢明です。

売却までに想定以上の制約が生じたケース

成年後見制度を利用する中で売却に至るまでには、想定以上の制約が生じることがあります。この現実は避けられない部分でもあります。

成年後見人が不動産を売却するためには、家庭裁判所の許可が必要です。申請には多数の書類を用意する必要があり、また許可が下りるまでに時間がかかります。ここで、売却のタイミングを逃すことがあれば、資産の急落というリスクにも直面します。

あるケースでは、売却の許可を得るまでに3ヶ月以上を要しました。その間に不動産市場が不安定になり、予定していた価格での売却が困難になった例もあります。許可を待つ間、家族は何も手を打てずにいたため、不動産運用の計画は狂ってしまいました。

過度な制約が課されることから、家族信託をしていなかったことで起きる不動産トラブルを防ぐためには、事前に予防策を取ることが重要です。

家族間トラブルに発展したケース

家族信託をしていなかったことが原因で、不動産に関するトラブルが家族間で発生することがあります。 特に遺産が絡む場合、家族間での意見の相違が生じ、対立に発展することも。家族内での対話が不十分であると、こうした問題は避けられないのです。

不動産トラブルは、財産分与についての理解不足や、適切な信頼関係が築かれていないことが原因となることがあります。 家族という信頼のもとに、契約の誤解や手続きの不備が発生しやすいためです。こうした背景には、不動産取引における複雑さが影響していることもあります。

例えば、家族間で不動産の売却を希望するメンバーと保持を望むメンバーがいたとします。このようなときに意見をまとめるプロセスを欠いていた結果、意見の対立が生まれます。中には、裁判沙汰に発展する例もあります。

このように、家族信託をしないことで、家族間トラブルが発生するのは珍しいことではありません。

「売りたい家族」と「慎重な家族」の意見対立

家族信託をしていない状態での不動産売買は、各々の家族の意見が衝突するケースが多々あります。 特に一方が売却を急ぐ家族で、もう一方が慎重な姿勢を示す場合、その対立は深刻化します。なぜなら、双方の期待値が違うためです。

ある事例では、親が亡くなった後の不動産を巡り、その子供たちの間で意見が割れました。長男は相続した家をすぐに売って現金化したいと考えましたが、弟はその家を保持し、家族の思い出として残したいと願っていました。 それぞれの意見は尊重されるべきですが、合意に至らないまま、感情のすれ違いが生じてしまいます。

結果として、家族内での意見対立が続き、両者にとってストレスとなってしまいます。

判断できないまま空き家化してしまった事例

家族信託を行っていないために、スムーズな意思決定ができず、不動産が空き家になってしまうこともあります。これが続くと、さまざまなリスクを生み出してしまいます。

例えば、親から相続した家がある場合、それをどうするかを家族で話し合い、大方針を決めて行動することが求められます。しかし、意見がそろわず、あいまいな状態のまま放置され、結果的に長期間管理されない空き家となってしまった例があります。 維持管理の問題や近隣への影響、さらには防犯や防災のリスクが発生するため、空き家問題は非常に深刻です。

このような状況を避けるためにも、早い段階からどうしたいかを話し合い、合意を目指す必要があります。家族信託を用いることで、空き家問題を未然に防ぐことができます。

もし事前に家族信託をしていればどうなっていたか

不動産トラブルを防ぐために、家族信託は非常に有効な手段です。もし事前に家族信託をしていれば、様々な問題を未然に防ぐことができたかもしれません。

家族信託を活用することで、資産管理や処分がスムーズに進められるようになります。特に不動産に関するトラブルでは、その効果は顕著です。

実際の事例を考えてみましょう。ある家族が相続時に不動産を巡って対立してしまったケース。もし家族信託を設定していれば、受託者が明確に定められ、迅速に売却や賃貸といった判断ができたことでしょう。 移行が円滑に行えることで、家族間の紛争を防ぐことができたはずです。

結局、家族信託を事前に設定しておけば、想定されるトラブルを防ぎ、家族関係を良好に保てたのではないでしょうか。

売却判断がスムーズにできたケースとの比較

家族信託を活用していた場合、売却判断が非常にスムーズに進む可能性が高かったと考えられます。そうでないケースと比較することで明らかです。

家族信託を行っていない場合、資産の売却には家族全員の承認が必要で、合意形成には時間がかかることもしばしばです。そのため、スムーズに進まないことがトラブルの火種になります。

一方、あるケースでは家族信託によって事前に受託者が定められていたため、売却のタイミングを逃さず、迅速な判断が行えました。 結果として、その不動産は高値で売却でき、家族の全員が満足する結果を得ることができました。

明らかに、家族信託により売却判断がスムーズに行えることは、不動産トラブルの解消に大いに役立つでしょう。

家族の負担を大きく減らせた可能性

家族信託を活用した場合、家族の心理的・経済的な負担を大きく減らせた可能性があります。

家族信託なしでは、不動産に対する合意形成や法律上の手続きなど、家族には多くの負担がのしかかります。特に、家族間の意見が割れることによるストレスが大きいです。

家族信託が設定されていた別のケースでは、受託者が財産管理の責任を負うことにより、他の家族は問題解決に集中することができました。 これにより、家族間の協力体制が強化され、不必要なストレスを抱えずに対応できたという結果をもたらしました。

したがって、家族信託は家族全体の負担軽減に大きく貢献することが期待されます。

失敗事例から見える家族信託の本当の役割

家族信託は多くの人にとって難解な概念です。しかし、家族信託をしていなかったために発生した不動産トラブルを見れば、その重要性が明らかになります。

「相続対策」だけで済まない、現実に待ち受ける困難。不動産トラブルの実例を通じて、家族信託がどのように重要な役割を果たすか理解することができます。

例えば、ある家庭では家長が急逝し、不動産の相続に関する準備が整っていませんでした。このために相続人同士が対立し、一時的に不動産が売却できない状態に。家族信託を活用していれば、このような時間とコストのかかるトラブルは避けられたでしょう。

家族信託の本当の役割とは、単に財産を受け継ぐことではなく、不動産運用の円滑化にあります。

「相続対策」ではなく「不動産を止めない対策」

家族信託は単なる「相続対策」ではなく、「不動産を止めない対策」としても非常に有効です。遺産相続の際に発生しうるトラブルを防ぐ効果を持っています。

複数の相続人がいる場合、不動産の分割は非常に難しくなるケースもあります。誰が管理するのか、売却するのか、使用するのか。こうした状況は、相続税非課税でも不動産を流動できなくする原因となります。

例えば、ある家庭で祖父が亡くなり、彼が所有していた土地を巡って家庭内で争いが発生しました。この土地は相続人全員の協力なしでは売却できず、しばらく開発計画もストップしてしまいました。家族信託を事前に活用していれば、家族間での意見調整がスムーズに進み、不動産の運用が中断することはなかったはずです。

不動産を止めないための家族信託は、ただの相続対策に留まらない重要な手段です。

元気なうちにしかできない準備の重要性

家族信託の準備は、健全なうちに行うことがとても重要です。理由は、判断能力がしっかりとしている時期にしか有効な準備ができないからです。

認知症などが進行してからでは遅く、法律的にも判断能力のない状態での契約は無効になることがあります。前もって信託を設定することで、本人が望む不動産の管理・運用方針をしっかりと反映させることができます。

実例を挙げると、ある家族が両親の認知症をきっかけに信託を作成しようとしましたが、進行度が進んでからでは手続きがスムーズに進みませんでした。この結果、急遽成年後見制度を利用することになり、多くの時間と労力がかかってしまいました。

元気なうちに家族信託をしっかりと整備しておくことは、将来の不動産管理において重要な備えです。

まとめ:実例が示す「備えていなかった代償」

家族信託をしていなかったことで起きる不動産トラブルは、決して特別なケースではありません。むしろ、施設入所や認知症の進行といった出来事は、どの家庭にも起こり得る現実であり、そのとき初めて「不動産が動かない」という問題に直面する方が非常に多いのが実情です。

不動産売却には、本人の明確な意思確認と判断能力が求められます。しかし、施設入所後は面談や外出が制限されることが多く、認知機能の低下が進めば、その条件を満たせなくなる可能性があります。その結果、「売却したいのに売れない」「手続きを進められない」という状況に陥ってしまいます。

成年後見制度を利用すれば解決できると考える方もいますが、後見制度には時間と費用がかかり、不動産売却の自由度も高いとは言えません。家庭裁判所の関与が必要となることで、売却のタイミングや条件に制約が生じ、結果的に家族の負担が増えるケースも少なくありません。

こうした実例から見えてくるのは、「問題が起きてからでは選択肢が限られてしまう」という厳しい現実です。不動産を所有している以上、将来の施設入所や判断能力の低下は、誰にとっても無関係ではありません。それにもかかわらず、「まだ大丈夫」「その時に考えればいい」と先送りにしてしまうことで、後から取り返しのつかない状況になることがあります。

家族信託は万能な制度ではありませんが、不動産を“止めない”ための有効な備えであることは間違いありません。元気なうちに意思を反映させ、誰がどこまで権限を持つのかを整理しておくことで、将来起こり得るトラブルを大きく減らすことができます。

今回紹介した実例は、家族信託をしていなかったことで起きた「代償」とも言えるものです。同じ状況にならないためにも、不動産を所有している方は、早い段階で選択肢を知り、準備を進めておくことが重要です。次回は、成年後見制度と家族信託の違いを、不動産売買の視点から詳しく解説していきます。