不動産で相続税対策はもう通用しないのか

「相続対策は不動産が有利」
これまで一度は聞いたことがある方も多いと思います。
実際に、現金を不動産に変えることで評価を下げるという考え方は、これまで広く使われてきました。現場でも、「とりあえず不動産を持っておいた方がいいですよね」というご相談は少なくありません。
ただ最近、その前提が大きく変わり始めています。
不動産の相続税評価の見直しが進み、これまで有効とされてきた対策が、そのままでは通用しにくくなってきているからです。
「節税になると思っていたのに、思ったほど効果が出ない」
「むしろ持ち方を間違えてしまった」
こうした声も、少しずつ増えてきています。
では、不動産を使った相続対策はもう意味がないのでしょうか。
結論から言うと、そうではありません。
ただし今は、「何を持つか」ではなく、
どう持つか、どう活かすかが問われる時代に変わっています。
今回は、不動産の相続税評価の見直しによって何が変わったのか、そしてこれからの相続対策として不動産をどう考えるべきかについて、不動産の現場の視点から整理していきます。
なぜ今「不動産による相続対策」が見直されているのか

これまで相続対策といえば、「とりあえず不動産を持っておくと有利」と言われることが多くありました。実際に、現金のままよりも不動産に変えることで評価を抑えられるケースがあったため、多くの方がこの考え方を取り入れてきた背景があります。
ただ最近は、この前提自体が見直され始めています。
その理由はシンプルで、評価と実際の価格とのズレが大きくなりすぎたからです。
現場でも、「同じ1億円でも持ち方で評価がここまで違うのか」という話は珍しくありませんでした。しかし、このズレを利用した節税が行き過ぎたことで、制度自体が見直される流れになっています。
つまり今は、「不動産=相続対策になる」という時代ではなく、
どう持つか・いつ持つかまで考えないと意味がない時代に変わってきています。
相続税評価の仕組みとこれまでの考え方
不動産の相続税評価は、基本的に実際に売れる価格(実勢価格)ではなく、路線価や固定資産税評価額をベースに算出されます。
そのため、同じ価値の資産でも
・現金 → そのまま評価
・不動産 → 評価が下がる
という構造になっていました。
これがいわゆる「不動産を使った相続対策」の基本的な考え方です。
特に賃貸用不動産の場合は、さらに評価が下がる仕組みがあり、相続税を圧縮しやすいとされてきました。これが広く知られるようになり、「相続対策=不動産」という流れができたわけです。
評価と実勢価格のズレが問題になっている理由
ただ、この仕組みには大きな問題がありました。
それが、評価額と実際に売れる価格の差が大きすぎるケースが増えたことです。
特にマンションなどでは、購入価格に対して評価額が極端に低くなるケースもあり、「実際には高額資産なのに、相続税評価は低い」という状況が生まれていました。
この状態が続くと、本来の課税の公平性が保てなくなります。
そのため、今回の見直しでは「実態に近づける」という方向に調整が入っています。
相続税評価の見直しで何が変わったのか

今回の見直しで大きく変わったのは、「評価の考え方」です。
これまでは一定のルールに当てはめれば評価が決まる仕組みでしたが、今後は実態に近づける方向で補正されるケースが増えると考えられます。
つまり、「形だけ整えれば評価が下がる」という単純な話ではなくなっています。
マンション評価の改正ポイント
マンションについては、評価額と市場価格の差を是正する動きが出ています。
これまで、特に高層マンションでは評価が低く出やすく、結果として相続税が抑えられるケースがありました。いわゆる“タワマン節税”と呼ばれるものです。
しかし今回の見直しでは、このズレが大きい物件については補正が入る仕組みとなり、実勢価格に近づく形で評価されるケースが増えています。
つまり、単純に「マンションを買えば評価が下がる」という時代ではなくなっています。
貸付用不動産のルール変更
もう一つ大きいのが、貸付用不動産に関する考え方です。
これまでは、賃貸に出しているだけで評価が下がる仕組みがありましたが、
短期間だけ貸すような“形式的な対策”には厳しくなる方向になっています。
つまり、直前に形だけ整えるような対策は通用しにくくなっています。
これまでの相続対策が通用しにくくなった理由

これまで相続対策といえば、「現金を不動産に変える」という考え方が一つの定番でした。実際に、同じ1億円でも現金のまま持つより、不動産に変えることで評価を下げることができるため、多くの方がこの方法を活用してきた背景があります。
特に賃貸用不動産については、評価をさらに下げることができる仕組みがあり、「とりあえず不動産を持っておけば相続対策になる」という認識が広く浸透していました。現場でも、「相続対策をしたいから物件を探してほしい」という相談は珍しくなく、むしろ一つの王道の考え方だったと言えます。
ただ、ここ数年でこの前提が大きく変わり始めています。
その理由は明確で、評価と実態のズレが大きくなりすぎたことにあります。
例えば、同じエリアのマンションでも、実際には1億円近い価値があるにもかかわらず、相続税評価は半分程度になるケースもありました。このような状況が続くと、本来の課税の公平性が崩れてしまいます。そのため、「実態に近づける」という方向で制度が見直される流れになっています。
つまり今は、これまでのように「仕組みだけを利用する」対策ではなく、
実態に合った持ち方を求められる時代に変わってきているということです。
「とりあえず不動産」が危険な理由
これまでの流れの中で、「相続対策=不動産」という考え方が強くなりすぎた結果、内容を深く考えずに不動産を購入するケースも増えてきました。
実際の相談でも、
「相続対策になると聞いて購入した」
「とりあえずアパートを建てた」
という話は少なくありません。
ただ、その中には
・立地が弱く空室が埋まらない
・収益が思ったより出ていない
・売却しようとしても価格がつかない
といった問題を抱えているケースもあります。
本来、不動産は「収益を生む資産」であるべきですが、相続対策だけを優先してしまうと、このバランスが崩れてしまうことがあります。
さらに今回の見直しによって、評価の優位性が以前ほど出にくくなると、
収益も弱い・評価メリットも薄い
という状態になる可能性もあります。
つまり、「とりあえず不動産」という考え方は、今の時代ではリスクにもなり得るということです。
直前対策が通用しなくなった背景
もう一つ大きな変化として、相続直前の対策が通用しにくくなってきています。
これまでは、相続が近づいてから不動産を購入し、評価を下げるという方法も一定程度使われてきました。しかし、このような動きは「明らかに節税目的」と見なされやすく、制度としても調整される方向に進んでいます。
実際に最近の流れを見ると、
短期間での対策
形式的な賃貸運用
といったものについては、厳しく見られる傾向があります。
これは裏を返すと、
長期的に保有し、実態として運用されているかどうか
が重要になっているということです。
不動産は本来、時間をかけて価値を形成していくものです。
それを短期的な節税手段としてだけ使うこと自体が、制度の趣旨から外れてきているとも言えます。
結果として今は、
・短期での節税テクニック
・形式だけ整える対策
ではなく、
収益・評価・承継を含めた“全体設計”が求められる時代になっています。
これまで通用していた方法が使えなくなるというより、
「中身が伴っていない対策が通用しなくなった」
と考える方が、実態に近いのではないでしょうか。
それでも不動産が有効なケースとは

ここまで見ると、「もう不動産は相続対策として使えないのではないか」と感じる方もいるかもしれません。
ただ結論から言うと、不動産そのものが使えなくなったわけではありません。
むしろ現場の感覚としては、
使い方を間違えなければ、今でも十分に有効な選択肢です。
今回の見直しは、不動産そのものを否定しているわけではなく、「中身のない対策」を是正しにきているものです。
つまり、収益性や将来性を伴った不動産であれば、今後も資産としての価値は十分にあります。
これまでのように「評価だけを下げるために持つ」のではなく、
資産としてどう活かすかまで含めて考えることが重要な時代になっています。
長期保有を前提とした考え方
不動産が有効なケースとしてまず挙げられるのが、長期保有を前提にした考え方です。
短期的な節税だけを目的にすると、今回のような制度変更の影響を受けやすくなります。
一方で、長期的に収益を生みながら資産として保有していく場合は、制度の変化に左右されにくいという特徴があります。
例えば、立地が良く安定した需要がある物件であれば、
・家賃収入が継続的に入る
・資産価値が大きく崩れにくい
といったメリットがあります。
このような不動産であれば、単なる節税ではなく、
資産運用として成立している状態になります。
現場でも、長く安定して運用されている物件は、相続の場面でも比較的スムーズに引き継がれているケースが多いです。
逆に、短期的な対策で取得した物件ほど、収益や管理の面で問題が出やすい傾向があります。
つまり、不動産は
“持つこと”ではなく“持ち続けられるか”が重要
ということです。
収益と資産承継をどう両立するか
もう一つ大切なのが、「収益」と「承継」のバランスです。
相続対策というと、どうしても「評価を下げる」という部分に目がいきがちですが、それだけでは不十分です。
実際には、
・収益が出ているか
・将来売却できるか
・誰が管理していくのか
といった要素を含めて考える必要があります。
例えば、評価は下がっても収益が出ない物件であれば、持ち続けること自体が負担になります。
また、立地が悪く売却しにくい物件の場合、相続した側が困るケースも少なくありません。
一方で、収益性と流動性がある不動産であれば、
・そのまま保有する
・売却して現金化する
といった選択肢を持つことができます。
この「選択肢がある状態」を作ることが、実は相続対策として非常に重要です。
現場でも、うまくいっているケースは共通していて、
“残すこと”だけでなく“出口”まで考えられている
という特徴があります。
相続対策で失敗しないための考え方

相続対策というと、「どれだけ税金を下げられるか」という視点で考えてしまう方が多いと思います。
もちろん税負担を抑えることは重要ですが、現場で見ている限り、それだけを優先してしまうと、結果的に失敗につながるケースが少なくありません。
今回の不動産評価の見直しもそうですが、制度は必ず変わります。
つまり、「今だけ有利な方法」に頼りすぎると、その前提が崩れたときに一気にバランスが崩れてしまいます。
だからこそ大切なのは、
節税だけでなく、全体として成立しているかどうかを見ることです。
収益性、管理のしやすさ、将来の引き継ぎ、そして売却のしやすさ。
これらが揃って初めて、「良い対策」と言えるのではないでしょうか。
節税だけで判断しないことが重要
相続対策でよくある失敗の一つが、「節税になるから」という理由だけで判断してしまうことです。
例えば、評価を下げることだけを目的に不動産を取得した場合、
・収益が出ない
・空室が埋まらない
・売却しづらい
といった問題が後から出てくることがあります。
実際の相談でも、
「節税のために買ったが、思ったより収益が出ていない」
「処分しようにも売れない」
といったケースは珍しくありません。
本来であれば、不動産は
収益を生む資産であることが前提です。
その前提が崩れてしまうと、節税どころか、逆に負担になってしまう可能性もあります。
また、今回のように制度が見直されることで、節税メリット自体が薄くなるケースもあります。
そうなると、「節税だけを目的にした不動産」は、一気に魅力を失ってしまいます。
だからこそ、判断の軸を
節税だけに置かないこと
これが非常に重要です。
出口(売却・承継)まで考える
もう一つ重要なのが、「最後どうするのか」を考えておくことです。
不動産は、持っているだけでは完結しません。
必ずどこかのタイミングで、
・引き継ぐ
・売却する
といった判断が必要になります。
この“出口”を考えずに進めてしまうと、後から大きな問題になることがあります。
例えば、
・子どもが不動産管理に興味がない
・共有になってしまい話がまとまらない
・売却しようとしても買い手がつかない
こういったケースは、事前に想定できたはずの問題です。
逆に、うまくいっているケースは、最初から
「将来どうするか」が決まっている
という共通点があります。
例えば、
・長期保有して収益を引き継ぐ
・タイミングを見て売却する
といった方向性があるだけで、選択肢の取り方が大きく変わります。
不動産は流動性が低い資産です。
だからこそ、
出口まで含めて設計することが重要になります。
まとめ:不動産は「使い方」で結果が変わる

これまでの相続対策では、「不動産にすれば有利」という考え方が一つの常識でした。
しかし今回の評価見直しによって、その前提は確実に変わり始めています。
単純に不動産を持つだけでは、以前のような効果は期待しにくくなり、
持ち方や中身がより重視される時代に入っています。
ただし、不動産そのものが使えなくなったわけではありません。
むしろ、収益性や将来性を伴った不動産であれば、今でも有効な資産であることに変わりはありません。
問題は、「目的が曖昧なまま進めてしまうこと」です。
節税だけを目的にしてしまうと、
・収益が出ない
・管理が負担になる
・売却が難しい
といった形で、後から問題が表面化することがあります。
実際の現場でも、「対策のつもりが負担になってしまった」というケースは少なくありません。
だからこそ重要なのは、
なぜやるのかを明確にすることです。
相続のためなのか、収益を残すためなのか、将来売却するためなのか。
この目的によって、選ぶべき不動産も、持ち方も変わってきます。
そしてもう一つ大切なのが、
今の状況を正しく把握することです。
どのくらいの資産があり、どのような収益になっていて、将来どのように引き継ぐ予定なのか。
これが整理できていない状態で対策を進めてしまうと、本来取れるはずの選択肢を見逃してしまうこともあります。
不動産は、使い方を間違えなければ今でも強い資産です。
ただし、それは「持てば得」という単純なものではなく、
設計して初めて活きるものです。
これからの相続対策は、テクニックではなく“全体のバランス”で考える時代です。
まずは一度、自分の資産の持ち方が今の時代に合っているのか。
そこから見直してみることが、結果的に一番無駄のない対策につながるのではないでしょうか。

